〔ふりがな〕 やまは みえない とうごう じゅん |
筆者よりお願い
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〔ふりがな〕 ひっしゃより おねがい ●このえほんは ぜんあくちゅうどく について、あるていど、りかいされたかたを たいしょうに しっぴつしたものです。 もしあなたが ぜんあくを たいせつなものと おおもいであり、すぐに「どっちがわるいの?」などと かんがえる こころのくせを おもちなら、 このえほんを よむまえに、へいわのえほんしゅう(www.j15.org)の ほかの さくひんを およみになってください。 ●このえほんは、さべつにかんする えほんしゅうの18ばんめのさくひんです。せっていなど ひきついでいる ぶぶんもおおく、 また しんりせつめいを しょうりゃくしているぶぶんも あります。 そのため、このえほんを さいしょに よんでも わかりにくい ところが おおいはずです。じゅんばんに およみいただくことを おすすめします。 |
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〔ふりがな〕 ●このえほんの ないようは すべてふぃくしょんです。げんじつせかいと こんどうされないように おねがいいたします。 |
〔ふりがな〕 これをみてごらん え? これってなに? これさ はなのこと? それともはっぱ? |
〔ふりがな〕 ほかには、なにがみえる? きのことかしら? しかも いるね |
〔ふりがな〕 ほかには? ほかにはなにもみえないよ |
〔ふりがな〕 ぼくがみてほしかったのは、このやまさ え? やま? |
人の目には、あまりにも大きなものは、かえって見えないようです。 |
〔ふりがな〕 やまなんて、どこにあるの? ひとのめには、あまりにもおおきなものは、かえってみえないようです。 |
さてここからは、遠い星の物語です。 今から数千年ほど昔、数人の丸い触覚を持つ人々(丸人とします)のグループが、次のような教えを唱え始めました。 |
〔注〕 この絵本は、フィクションであり、地球とは無関係の話です。当然、地球のいかなる宗教・教えとも無関係です。 |
〔ふりがな〕 さてここからは、とおいほしの ものがたりです。 いまから すうせんねんほどむかし、すうにんの まるいしょっかくを もつひとびと(まるじんとします)のぐるーぷが、つぎのような おしえを となえはじめました。 ●たにんをあいせ。 ●ぜんをあいせ。あくをにくめ。あくとたたかえ。 ●あくにんは かみにのろわれ じごくへおち、えいえんに ひでやかれる。 ●いみもなくひとを ころすな。 ●いきょうとは あくまだ。 ●ひとは うまれながらに つみぶかい。 |
この教えは、丸人の間に、長い年月をかけて少しずつ広まっていきました。 というのも、丸人はこの教えを信じれば誰もが皆、幸福になれると思ったのです。こんな風に、です。 | |
●他人を愛せ。 ⇒誰もが皆、愛し合い、愛がいっぱいの世界になる。 ●善を愛せ。悪と戦え。悪人は神に呪われ、地獄へ落ちる。 ⇒悪いことをする人がいなくなる。 ●異教徒は悪魔だ。 ⇒悪魔になりたくないので、みんなこの教えを信じるようになる。 ●人は罪深い ⇒「自分は罪深い」と謙虚になる。そしてこれ以上、罪を犯さないように気を付ける。 |
〔ふりがな〕 このおしえは、まるじんのあいだに、ながいねんげつを かけて すこしずつひろまっていきました。 というのも、まるじんは このおしえをしんじれば だれもがみな、こうふくになれると おもったのです。こんなふうに、です。 ●たにんをあいせ ⇒ だれもがみな、あいしあい、あいがいっぱいの せかいになる。 ●ぜんをあいせ。あくとたたかえ。 あくにんは かみにのろわれ、じごくへおちる。 ⇒ わるいことをするひとが いなくなる。 ●いきょうとは あくまだ ⇒ あくまになりたくないので、みんなこのおしえを しんじるようになる。 ●ひとは つみぶかい ⇒ 「じぶんはつみぶかい」とけんきょになる。そしてこれいじょう、つみを おかさないように きをつける。 |
もちろん、この教えで救われる丸人もいたのです。 |
〔ふりがな〕 もちろん、このおしえで すくわれる まるじんもいたのです。 |
ところが残念なことに、この教えを錯覚する丸人も少なくはありませんでした。
彼らは願いに反して、原因も分からぬままに少しずつ不幸になって行きました。それはこんな風に、です。 | |
●他人を愛せ⇒愛が命令で生まれると錯覚⇒嘘、虐待、争いが増加する。 | |
〔参考絵本〕 ●愛せという命令への錯覚が、嘘、虐待、戦争といった悲劇を生んでしまう心理については、 絵本「愛と嘘」 「愛と敵」 およびオムニバス絵本集「愛を命令しないで」 をご参照ください。なおこの頁の絵は、オムニバス絵本集「愛を命令しないで」の中の絵本 「子供を愛しなさい-児童虐待の深層心理」で使ったものです。 |
〔ふりがな〕 ところが ざんねんなことに、このおしえを さっかくする まるじんも すくなくは ありませんでした。 かれらは ねがいにはんして、げんいんもわからぬままに すこしずつふこうに なっていきました。それはこんなふうに、です。 ●たにんをあいせ ⇒ あいが めいれいでうまれると さっかく ⇒ うそ、ぎゃくたい、あらそいが ぞうかする。 |
●善を愛せ。悪と戦え。悪人は神に呪われ、地獄へ落ちる
⇒地獄の恐怖に駆られた人々が、善になるために悪を探し、悪と戦っていると錯覚し、互いに争う ●異教徒は悪魔だ⇒違う教えを信じる人たちを悪魔だと錯覚し、 攻撃する ●人は罪深い⇒自分を罪深い悪人だと錯覚し、狂暴化する |
〔参考絵本〕 ●地獄の恐怖が、人間を狂暴化させる心理については、絵本 「良い子にならなきゃ」 「悪夢からの逃走」等をご参照ください。 ●善悪の錯覚が、争いを生む心理については、 善悪という命令シリーズ、 「終わりの無い物語」 「魔法のメガネ」 「パブロフの犬」等をご参照ください。 ●異教徒は悪魔だという教えへの錯覚が、他者への攻撃につながる心理については、絵本 「不安な初対面」、 「見ず知らず」、 「宇宙の異教徒」をご参照ください。 ●人は罪深いという教えへの錯覚が人間を狂暴化させる心理については、絵本 「私は悪い人間です」をご参照ください。 |
〔ふりがな〕 ●ぜんをあいせ。あくと たたかえ。 あくにんは かみにのろわれ、じごくへおちる。 ⇒ じごくの きょうふに かられたひとびとが、ぜんになるために あくをさがし、あくとたたかっているとさっかくし、たがいに あらそう。 ●いきょうとは あくまだ ⇒ ちがうおしえを しんじるひとたちを あくまだとさっかくし、こうげきする。 ●ひとはつみぶかい ⇒ じぶんをつみぶかい あくにんだと さっかくし、きょうぼうかする。 |
争いが増えるに連れ、丸人の間に「人と人は対立し争い合うもの」という認識が少しずつ、しかし着実に広がって行きました。 そしてその認識に従って、武器もまたより殺傷力の強いものへと変化していきました。 |
〔ふりがな〕 あらそいが ふえるにつれ、まるじんのあいだに「ひととひとは たいりつし あらそいあうもの」という にんしきが すこしずつ、しかし ちゃくじつに ひろがっていきました。 そして そのにんしきに したがって、ぶきもまた よりさっしょうりょくの つよいものへと へんかしていきました。 |
さてある時、丸人の一団が大海原を航海し、三角の触覚を持つ人々(三角人とします)の国を発見しました。 そこには錯覚された丸人の教えは伝わってはおらず、人々は概して平和に仲良く暮らしていました。 |
〔ふりがな〕 さてあるとき、まるじんの いちだんが おおうなばらを こうかいし、 さんかくの しょっかくをもつ ひとびと(さんかくじんとします)のくにを はっけんしました。 そこには さっかくされたまるじんの おしえはつたわってはおらず、 ひとびとは がいして へいわに なかよくくらしていました。 |
丸人たちから見て、彼らは異民族であり異教徒です。 丸人たちは、「異教徒は悪魔」と信じるままに、初対面の彼らを悪魔だと錯覚し攻撃しました。 |
三角人たちは、ほとんど武器を持ちません。 突然、見知らぬ人々に襲われることがあるなど想像したこともありません。彼らは無抵抗のまま殺されてしまいました。 |
〔参考絵本〕 見知らぬ異教徒を悪魔だと錯覚し、攻撃する心理/原因については、 「宇宙の異教徒」 「不安な初対面」をご参照ください。 |
〔ふりがな〕 まるじんたちから みて、かれらは いみんぞくであり いきょうとです。 まるじんたちは、「いきょうとはあくま」と しんじるままに、しょたいめんの かれらを あくまだと さっかくし こうげきしました。 さんかくじんたちは、ほとんどぶきを もちません。 とつぜん、みしらぬひとびとに おそわれることがあるなど そうぞうしたことも ありません。 かれらは むていこうのまま ころされてしまいました。 |
そのうち、ようやく丸人たちも三角人たちが悪魔では無かったことに気づきました。 ・・・大変です! 無意味な人殺し(それは悪いことでした)をしてしまったのです! |
〔参考絵本〕 地獄の恐怖から逃れるために、妄想を作り現実逃避をするという心理については 「追い詰められて」 「悪夢からの逃走」をご参照ください。 なお、妄想を作って現実逃避をするという心理は、地獄の恐怖に限るものではありません。 現実と妄想の混同の心理については、 連作絵本「想像という現実」でも詳しく取り上げています。 |
〔ふりがな〕 そのうち、ようやく まるじんたちも さんかくじんたちが あくまでは なかったことにきづきました。 ・・・たいへんです! むいみな ひとごろし(それはわるいことでした)を してしまったのです! ひえええ~! このままじゃ、おれたちは あくにんに なってしまうよお! |
恐怖に追い詰められた丸人たちは、三角人を同じ人間ではないと思い込むこととしました。 |
〔参考絵本〕 現実逃避のために妄想を作り、その結果、人種差別が生まれるという心理については 「追い詰められて」 「悪夢からの逃走」をご参照ください。 また、人が認識に基づいて行動することに関しては、 絵本「テニスと鉛筆」をご参照ください。 |
〔ふりがな〕 きょうふに おいつめられた まるじんたちは、さんかくじんを おなじにんげんではないと おもいこむこととしました。 あいつらはさるだ! やばんじんだ! れっとうじんしゅだ! |
人は認識に基づいて行動します。三角人は動物だと信じた丸人は、三角人を狩り・支配・売買の対象とするようになりました。奴隷制度の始まりです。 |
〔参考絵本〕 現実逃避のために妄想を作り、その結果、人種差別が生まれるという心理については 「追い詰められて」 「悪夢からの逃走」をご参照ください。 また、人が認識に基づいて行動することに関しては、 絵本「テニスと鉛筆」をご参照ください。 |
〔ふりがな〕 ひとは にんしきにもとづいて こうどうします。さんかくじんは どうぶつだと しんじたまるじんは、さんかくじんを かり・しはい・ばいばいの たいしょうと するようになりました。どれいせいどの はじまりです。 |
さらに丸人は人類の進化と文明化のため、三角人の国を次々に侵略・征服していきました。 |
〔ふりがな〕 さらにまるじんは じんるいのしんかと ぶんめいかのため、さんかくじんのくにを つぎつぎに しんりゃく・せいふくして いきました。 |
征服後、丸人は三角人へ「お前たちは野蛮な劣等人種だ」と繰り返し教え込みました。 その結果、三角人自身もまた自分達を劣等人種であり、丸人のことを自分達の主人であり神様のような存在だと思い込むようになっていきました。 |
「三角人は劣等人種。丸人はより進化した優越人種」 …この妄想は、いつしかこの星のほとんどの人々に共有される「常識」となりました。 |
〔ふりがな〕 せいふくご、まるじんは さんかくじんへ「おまえたちは やばんな れっとうじんしゅだ」 とくりかえし おしえこみました。そのけっか、さんかくじん じしんもまた じぶんたちを れっとうじんしゅであり、 まるじんのことを じぶんたちの しゅじんであり かみさまのような そんざいだと おもいこむように なっていきました。 「さんかくじんは れっとうじんしゅ。まるじんは よりしんかした ゆうえつじんしゅ」 ・・・このもうそうは、いつしか このほしの ほとんどのひとびとに きょうゆうされる「じょうしき」となりました。 |
そして数百年が経ちました。丸人は妄想から覚めずに侵略を続け、 この星全体の人口からみれば1割超に過ぎない丸人が、居住可能な陸地の9割近くを支配するようになっていました。 |
丸人がまだ征服していない土地は、辺境の地の一部に残るだけです。 ・・・そこに、三角人の小さな国、「ノウソ」がありました。 |
〔ふりがな〕 そして すうひゃくねんが たちました。まるじんは もうそうから さめずに しんりゃくをつづけ、このほしぜんたいの じんこうからみれば 1わりちょうに すぎないまるじんが、きょじゅう かのうな りくちの9わりちかくを しはいするように なっていました。 まるじんが まだせいふくしていないとちは、へんきょうのちの いちぶにのこるだけです。 ・・・そこに、さんかくじんの ちいさなくに、「のうそ」がありました。 |
ノウソの国は、三角人が何万年も前から住む、とても古い国でした。 他の三角人と同様に、彼らも平和に穏やかに暮らしていたのです。 ただ遠隔地に存在したため、他の三角人たちの国々が征服され支配されて行く様子を遠くから観察することが出来ました。 |
〔ふりがな〕 のうそのくには、さんかくじんが なんまんねんも まえからすむ、とてもふるいくにでした。 ほかのさんかくじんと どうように、かれらも へいわに おだやかに くらしていたのです。 ただえんかくちに そんざいしたため、ほかのさんかくじんたちの くにぐにが せいふくされ しはいされていくようすを とおくから かんさつすることが できました。 あのくにも、あのくにも、あのくにも、みんなまるじんに せめほろぼされてしまった こわい! |
ノウソの国は狭く、資源らしい資源もなく、丸人にとって魅力的ではありませんでした。
そこで「こんなどうでもイイ国の征服は後回し」と思われていたのです。 |
ノウソの人々には、なぜ丸人が全世界を武力で征服しようとするのか分かりませんでした。
でも征服などされたくありません。そこでノウソの人々は大慌てで、富国強兵につとめることとなったのです。 |
〔ふりがな〕 のうそのくにはせまく、しげんらしい しげんもなく、まるじんにとって みりょくてきではありませんでした。 そこで「こんなどうでもいい くにのせいふくは あとまわし」と おもわれていたのです。 のうそのひとびとには、なぜまるじんが ぜんせかいを ぶりょくで せいふくしようとするのか わかりませんでした。 でもせいふくなど されたくありません。そこで のうそのひとびとは おおあわてで、ふこくきょうへいに つとめることと なったのです。 |
気が付くと、丸人の侵略はすぐ近くまで迫っていました。それは時間との競争でした。 |
〔ふりがな〕 ほうだいをつくるんだ! いそげ! きがつくと、まるじんのしんりゃくは すぐちかくまで せまっていました。それはじかんとの きょうそうでした。 |
ノウソ人は丸人との出会いを通して、人種差別の存在にも気づきました。 野蛮人だと思われては対等に付き合うことは出来ません。そこで自分たちが文明人で能力も低くないと証明しなければと考えました。 そこで、急ピッチの富国強兵で何とか国を守りつつ、次のように様々な努力もしたのです。 |
・努力1:国際法を尊重し守ること |
これは自分たちが法律を守れる文明人であることを示すためでした。 そこで国際的な法律・ルール・条約は、たとえ納得できないものであってもバカ正直に守ったのです。 |
〔ふりがな〕 のうそじんは まるじんとの であいをとおして、じんしゅさべつのそんざいにも きづきました。やばんじんだと おもわれては たいとうにつきあうことは できません。 そこで じぶんたちが ぶんめいじんで のうりょくもひくくないと しょうめいしなければとかんがえました。 そこで、きゅうぴっちの ふこくきょうへいで なんとかくにをまもりつつ、つぎのように さまざまなどりょくもしたのです。 どりょく1:こくさいほうを そんちょうし まもること これは じぶんたちがほうりつを まもれる ぶんめいじんであることをしめすためでした。 そこで こくさいてきなほうりつ・るーる・じょうやくは、たとえ なっとくできないものであっても ばかしょうじきに まもったのです。 |
〔ふりがな〕 のうそこくない あんたらには、わたしを つかまえられないね。 ちがいほうけんだよ。 おさるさんたち、さようなら~ た、たとえ ふびょうどうじょうやくでも、じょうやくは まもらないと まるじんのどろぼう のうそじん |
ただしこれには問題もありました。というのもこの星の国際法には、トラブルを避けるという法律本来の目的だけではなく、 丸人が三角人を差別し・支配するという目的もあったのです。 それを三角人であるノウソの人々が尊重することには初めから矛盾が存在するのです。 つまりノウソ以外の人々(三角人も丸人も)の目からすれば、なぜ丸人が作った法律を三角人のノウソが守り、丸人のようにふるまうのか、となるのです。 |
国際法を守れば他の三角人に嫌われる。かといって守らなければ丸人に野蛮人だと思われる。…これがノウソの立場でした。
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〔ふりがな〕 ただし これには もんだいもありました。 というのも このほしの こくさいほうには、とらぶるをさけるという ほうりつ ほんらいのもくてき だけではなく、 まるじんが さんかくじんを さべつし・しはいするという もくてきも あったのです。 それを さんかくじんである のうそのひとびとが そんちょうすることには はじめから むじゅんが そんざいするのです。 つまり のうそいがいの ひとびと(さんかくじんもまるじんも)の めからすれば、 なぜまるじんが つくったほうりつを さんかくじんの のうそがまもり、まるじんのように ふるまうのか、となるのです。 こくさいほうを まもれば たのさんかくじんに きらわれる。 かといって まもらなければ まるじんに やばんじんだとおもわれる。 …これがのうその たちばでした。 |
〔ふりがな〕 たの さんかくじんのくにで ふびょうどうじょうやくだって じょうやくなんだから、まもらないと のうそじん なんで おなじさんかくじんの のうそが いうんだよ ちがいほうけんだと? ふざけるな! おまえはまるじんか? ばかやろう! たのさんかくじん あんたらには、わたしをつかまえられないね。ちがいほうけんだよ。 おさるさんたち、さようなら~ まるじんのどろぼう |
・努力2:丸人の文化・科学等を学び、社会システムの全てを、丸人の国に似せて作りかえること |
彼らの文化、芸術、科学技術等をマスターし、社会システムまでコピーすれば、強国になるだけではなく、 野蛮人だと思われなくなると思ったのです。 ノウソ人は現実的で、とても柔軟な考え方を持っていました。 しかし、ここにも問題はありました。誰かの知識を学ぶということは、その人の間違いも含めて学ぶということです。 丸人の知識をあまりにも急いでマスターしようと試みたため、図らずも丸人の持つ偏見/間違った知識を取り入れ、 また、自分達の優れた知識・伝統はないがしろにするということもあったのです。 |
〔ふりがな〕 どりょく2: まるじんのぶんか・かがくなどをまなび、しゃかい しすてむの すべてを、 まるじんのくにに にせてつくりかえること かれらのぶんか、げいじゅつ、かがくぎじゅつなどを ますたーし、しゃかいしすてむまで こぴーすれば、 きょうこくになるだけではなく、やばんじんだと おもわれなくなるとおもったのです。 のうそじんは げんじつてきで、とてもじゅうなんな かんがえかたをもっていました。 しかし、ここにも もんだいはありました。 だれかのちしきをまなぶということは、そのひとのまちがいも ふくめて まなぶということです。 まるじんのちしきを あまりにも いそいでますたーしようと こころみたため、 はからずも まるじんのもつへんけん/まちがったちしきを とりいれ、 また、じぶんたちのすぐれたちしき・でんとうは ないがしろにするということもあったのです。 |
〔注〕 土人という言葉は、現在、差別用語として扱われているようです。 参照;ウィキペディア |
〔ふりがな〕 この ひとたちは、どじんという れっとうじんしゅです りせいがないので、むちでしつけなければ いけません ふーん、そうなんだあ |
・努力3:様々な国際試合/競争に参加すること |
どのような分野であれ丸人と競争して勝てば、
「自分たちが劣等人種ではない」と証明できると思ったのです。
もちろん野蛮人ではないと示すために、丸人が作ったルールは真面目に尊重することが前提です。 一方で丸人たちにとっての国際試合は自分たちが優越人種だということを証明するためのものでした。 そこで、勝つことが何よりも重要なこととされました。 |
〔ふりがな〕 どりょく3:さまざまな こくさいじあい/きょうそうに さんかすること どのようなぶんやであれ まるじんと きょうそうしてかてば、 「じぶんたちが れっとうじんしゅではない」と しょうめいできると おもったのです。 もちろん やばんじんではないと しめすために、 まるじんが つくった るーるは まじめに そんちょうすることが ぜんていです。 いっぽうで まるじんたちにとっての こくさいじあいは じぶんたちが ゆうえつじんしゅ だということを しょうめいするための ものでした。 そこで、かつことが なによりも じゅうようなことと されました。 |
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〔ふりがな〕 ちゃんぴおん ぼうえい! ええ!? そりゃないよお |
さて、もともと「三角人が劣等人種」というのは、丸人たちの妄想に過ぎません。 それがたとえ丸人独自の文化/スポーツ/科学であっても、努力すれば追いつくのは当たり前です。 ノウソの人々が努力を重ねた結果、 丸人が「自分たちが優越人種である」と証明することは、どんどんと難しくなっていきました。 |
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その結果、丸人の間に大きな不安・恐怖が広がって行きました。 |
〔ふりがな〕 さて、もともと「さんかくじんが れっとうじんしゅ」というのは、まるじんたちの もうそうにすぎません。 それがたとえ まるじんどくじの ぶんか/すぽーつ/かがくであっても、どりょくすれば おいつくのは あたりまえです。 のうそのひとびとが どりょくをかさねたけっか、まるじんが「じぶんたちがゆうえつじんしゅである」と しょうめいすることは、どんどんとむずかしく なっていきました。 またのうそが かちやがった! しかも、せかいきろくだ そのけっか、まるじんのあいだに おおきなふあん・きょうふが ひろがっていきました。 |
「三角人が劣等」という妄想は、もともと丸人が 自己正当化のために作ったものです。「三角人であるノウソが、 丸人と同じ能力を持つ」と証明されれば、 丸人は、これまで三角人にしてきた残虐行為の正当化が出来なくなってしまうのです。 |
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〔ふりがな〕 「さんかくじんがれっとう」という もうそうは、もともとまるじんが じこせいとうかのために つくったものです。 「さんかくじんである のうそが、まるじんと おなじ のうりょくをもつ」としょうめいされれば、 まるじんは、これまで さんかくじんにしてきた ざんぎゃくこういの せいとうかが できなくなってしまうのです。 ひえええ~! このままじゃ、おれたちは あくにんに なってしまうよお! |
当然、丸人たちは自分たちの妄想を壊していくノウソを激しく恐れ、憎むようになって行きました。 |
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一方で、ノウソの人々は、その理由はまるで分からぬまま、丸人の敵意だけは、ひしひしと感じていました。 |
〔ふりがな〕 とうぜん、まるじんたちは じぶんたちの もうそうを こわしていく のうそをはげしくおそれ、にくむように なっていきました。 れっとうじんしゅが なまいきなんだよ いっぽうで、のうそのひとびとは、そのりゆうは まるでわからぬまま、まるじんのてきいだけは、ひしひしと かんじていました。 |
なぜこれほどまでに嫌われるのか? ノウソの人々は、 「僕たちがまだ劣等だと思われているからに違いない。もっと努力しよう」と考えました。 しかしそれは過大評価という錯覚でした。実際には、丸人は妄想が壊されそうで怯えていただけなのです。 |
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〔ふりがな〕 なぜこれほどまでに きらわれるのか? ノウソのひとびとは、 「ぼくたちが まだれっとうだと おもわれているからに ちがいない。 もっとどりょくしよう」とかんがえました。しかしそれは かだいひょうかという さっかくでした。 じっさいには、まるじんは もうそうがこわされそうで おびえていただけなのです。 |
こうしてノウソの人々は、丸人の心理を見抜けぬまま努力を重ね、 結果的に丸人を怯えさせ、丸人の心にノウソへの激しい敵意を醸成して行ったのです。 |
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〔ふりがな〕 こうして のうそのひとびとは、まるじんのしんりを みぬけぬまま どりょくをかさね、 けっかてきに まるじんをおびえさせ、まるじんのこころ にのうそへのはげしい てきいを じょうせいして いったのです。 がんばれ! もっとがんばれ! こんな たいむじゃ まるじんに かてないぞ |
そんな緊張感ただよう、ある日のこと。国際会議でノウソの外交官が爆弾発言をしたのです。 |
ノウソにしてみれば、それはごく自然な主張でした。 人種差別は恐ろしい悲劇や憎しみの原因であり、それを無くしたいと思うのは当たり前のことです。 |
〔注〕 読者の中には、日本が国際連盟で提案した人種平等決議案を連想される方がいるかも知れませんが、無関係です。 |
〔ふりがな〕 そんな きんちょうかん ただよう、あるひのこと。こくさいかいぎで のうその がいこうかんが ばくだんはつげん したのです。 みなさん、じんしゅは ほんらい、びょうどうではないでしょうか? じんしゅさべつを てっぱいしませんか? のうそにしてみれば、それはごくしぜんな しゅちょうでした。 じんしゅさべつは おそろしいひげきや にくしみのげんいんであり、それをなくしたいと おもうのは あたりまえのことです。 |
しかし丸人にしてみれば、事情は全く違います。もし人種が平等であるなら、丸人の世界征服も、三角人の奴隷化も隔離政策も、その正当な根拠を失ってしまいます。 それは自分達が悪となることであり、決して認められないことでした。 |
〔ふりがな〕 しかし まるじんに してみれば、じじょうは まったくちがいます。もし じんしゅが びょうどうであるなら、まるじんのせかいせいふくも、さんかくじんの どれいかも かくりせいさくも、そのせいとうな こんきょを うしなってしまいます。それはじぶんたちが あくとなることであり、けっして みとめられないことでした。 ひえええ~! このままじゃ、おれたちは あくにんになってしまうよお! |
ついにノウソは越えてはいけない一線を越えてしまったのです。
丸人たちは、もう我慢できないと互いに結束し、 「必ずやノウソの国を打ち滅ぼし、征服し、叩きのめし、奴らが劣等人種であることを証明する」と固く誓い合ったのです。 |
〔参考絵本〕 どうしても人種平等を認められずに狂暴化してしまう心理については、絵本「悪夢からの逃走」をご参照ください。 |
〔ふりがな〕 ついに のうそは こえてはいけない いっせんをこえてしまったのです。まるじんたちは、もうがまんできないと たがいにけっそくし、「かならずや のうそのくにをうちほろぼし、せいふくし、たたきのめし、やつらが れっとうじんしゅであることを しょうめいする」とかたく ちかいあったのです。 |
さあ、丸人たちは、今までにもましてノウソに対して、ありとあらゆる嫌がらせを開始しました。
彼らが目を付けたのは、ノウソが行なってきた勢力拡大です。丸人が三角人を征服することは、優越人種なので正しいことです。 しかしながら劣等人種のノウソが丸人に対抗して勢力を拡大することは許されません。それは人類の進化に反することなのです! そこで、彼らは一致団結してノウソ国に通知しました。 |
〔ふりがな〕 さあ、まるじんたちは、いままでにも まして のうそにたいして、ありとあらゆる いやがらせを かいししました。 かれらが めをつけたのは、のうそが おこなってきた せいりょく かくだいです。まるじんが さんかくじんを せいふくすることは、ゆうえつじんしゅなので ただしいことです。しかしながられっとうじんしゅの のうそが まるじんにたいこうして せいりょくをかくだいすることは ゆるされません。それはじんるいの しんかにはんすることなのです! そこで、かれらは いっちだんけつして のうそこくに つうちしました。 |
〔注〕 日米交渉なり ハル・ノートのことではありません。念のため。 |
〔ふりがな〕 おまえらのせいりょく かくだいは いっさい、みとめない。 おまえらは ぜんいん、いえも とちも どうろも こうじょうも すべてすてて、じぶんたちの ちいさなとちへもどれ! な、なぜだ!? われわれは こくさいほうを じゅんしゅしているのに! |
そして丸人国内にあるノウソの資産を凍結し、ノウソ国の勢力範囲に存在する不満分子へ武器を供給して反乱を支援し、
ノウソ人への隔離政策を強化し、ノウソ国への重要な資源の輸出を禁止しました。 資源の輸入、特にエネルギーの輸入が出来なければ、軍艦も戦車も動かなくなります。 軍艦も戦車も動かなくなれば、丸人たちの敵意から身を守るすべはなくなります。 他の三角人たちと同様に、征服され支配されることとなってしまいます。 |
〔注〕 排日移民法や 援蒋ルートや ABCD包囲網等のことではありません。念のため。 |
〔ふりがな〕 そして まるじん こくないにある のうその しさんを とうけつし、のうそこくの せいりょく はんいにそんざいする ふまんぶんしへ ぶきをきょうきゅうして はんらんを しえんし、のうそじんへの かくりせいさくを きょうかし、 のうそこくへの じゅうようなしげんの ゆしゅつをきんししました。 しげんのゆにゅう、とくに えねるぎーのゆにゅうが できなければ、ぐんかんも せんしゃもうごかなくなります。 ぐんかんも せんしゃも うごかなくなれば、まるじんたちのてきいから みをまもるすべは なくなります。 ほかのさんかくじんたちと どうように、せいふくされ しはいされる こととなってしまいます。 |
〔ふりがな〕 う、うごかない! |
何しろ、この星の土地のほとんどは丸人が征服済みです。丸人の連合軍の戦力は、ノウソの戦力の何十倍にもなりました。 |
ちっぽけなノウソが戦争をして勝てる見込みは全く有りません。 |
〔ふりがな〕 なにしろ、このほしの とちの ほとんどは まるじんが せいふくずみです。 まるじんの れんごうぐんの せんりょくは、のうその せんりょくの なんじゅうばいにも なりました。 まるじんれんごうぐん のうそぐん ちっぽけなのうそが せんそうをして かてるみこみは まったくありません。 |
負けると分かっている戦争を自分から好んでする人はいません。 当然、ノウソのリーダーも戦争を避けるために、あらゆる努力をしました。丸人連合軍に対して出来る限りの妥協をし、何度となく話し合いを呼びかけたのです。 しかしその全てが拒絶されました。 丸人たちがノウソに求めたことは、対等な話し合いではなく劣等人種であることの証明、つまりは屈服に他なりません。 |
〔参考絵本〕 負けると分かっている喧嘩について、絵本「負ける喧嘩」 「沈黙の声」で取り上げています。ご参照ください。 |
〔ふりがな〕 まけると わかっているせんそうを じぶんから このんでするひとは いません。 とうぜん、のうその りーだーも せんそうをさけるために、あらゆる どりょくをしました。まるじんれんごうぐんに たいして できるかぎりのだきょうをし、なんどとなく はなしあいを よびかけたのです。しかしそのすべてが きょぜつされました。 まるじんたちが のうそにもとめたことは、たいとうな はなしあいではなく れっとうじんしゅであることの しょうめい、つまりは くっぷくにほかなりません。 |
〔ふりがな〕 のうそのりーだーが あいたがっています さると はなすことなど あるものか! |
さて、本気になってノウソをつぶしにかかった丸人を前にして、ノウソ国に残された選択肢は二つしかありませんでした。 |
・選択1 戦争をせずに、屈服する |
これはつまり、自分たちが劣等人種であると認めることです。すぐに大勢の人が殺されることは免れますが、国の独立は無くなるでしょう。 そして他の三角人たちと同じように差別され、支配されることとなるでしょう。 |
〔ふりがな〕 さて、ほんきに なって のうそをつぶしに かかったまるじんをまえにして、のうそこくに のこされた せんたくしは ふたつしかありませんでした。 ・せんたく1 せんそうをせずに、くっぷくする これはつまり、じぶんたちが れっとうじんしゅであるとみとめることです。 すぐにおおぜいのひとが ころされることは まぬがれますが、 くにのどくりつは なくなるでしょう。 そして ほかのさんかくじんたちと おなじようにさべつされ、しはいされることとなるでしょう。 |
〔ふりがな〕 おまえらは れっとうじんしゅだ。 おれたちには ぜったいふくじゅうだぞ かしこまりました、まるじんさま |
・選択2 負けると分かっている戦争をする |
これはつまり、大勢の人がすぐにひどい目に会うということです。国の独立もなくなるでしょう。 |
この二つの選択肢の中から、ノウソのリーダーは戦争することを選択しました。 そこには「死中に活」というノウソの伝統的な価値観がありました。 |
〔注〕 読者の中には、永野修身元帥の「戦わざれば亡国と政府は判断されたが、戦うもまた亡国につながるやもしれぬ。 しかし、戦わずして国亡びた場合は魂まで失った真の亡国である。 しかして、最後の一兵まで戦うことによってのみ、死中に活路を見出うるであろう。」 を連想される方もいるかも知れませんが、無関係です。念のため。 |
〔ふりがな〕 ・せんたく2 まけると わかっている せんそうをする これはつまり、おおぜいのひとが すぐにひどいめにあうということです。くにの どくりつも なくなるでしょう。 このふたつの せんたくしのなかから、のうそのりーだーは せんそうすることを せんたくしました。 そこには「しちゅうにかつ」という のうその でんとうてきな かちかんが ありました。 |
とはいえ負ける戦争をするということは、自分自身の命が無くなるというだけではなく、愛する家族や同胞も大勢、殺されるということです。 ノウソ国も滅亡するかも知れません。 |
ノウソのリーダーは開戦を避けられないと分かったとき、号泣したのです。 |
〔ふりがな〕 とはいえ まけるせんそうを するということは、じぶんじしんの いのちが なくなるというだけではなく、あいするかぞくや どうほうも おおぜい、ころされるということです。 のうそこくも めつぼうするかもしれません。 のうその りーだーは かいせんを さけられないとわかったとき、ごうきゅうしたのです。 |
戦争がはじまりました。
戦力には何十倍もの差があります。 しかし、ノウソの兵たちの闘志で、その戦争は実に激しいものとなりました。 |
〔ふりがな〕 せんそうが はじまりました。せんりょくには なんじゅうばいもの さがあります。 しかし、のうそのへいたちの とうしで、そのせんそうは じつにはげしいものと なりました。 |
ノウソの軍隊は同じ条件なら、丸人の軍隊に負けることはありませんでした。 何倍もの戦力差があって、初めて兵力が均衡したのです。 |
〔ふりがな〕 のうそのぐんたいは おなじじょうけんなら、まるじんのぐんたいに まけることはありませんでした。 なんばいもの せんりょくさがあって、はじめて へいりょくが きんこうしたのです。 |
さて、丸人の中には、強さこそ劣等人種と優越人種の違いだと、信じている人々が大勢いました。
なんせ、他の三角人たちは丸人に何百年も負け続け、ずうっと弱さを証明してきたからです。 強さこそが劣等人種と優越人種の違いだと信じている、多くの丸人たちの目に、ノウソ軍の強さは衝撃的でした。 そして彼らの目には、ノウソの人々が劣等人種だとは見えなくなりました。 つまり一部の丸人たちの、三角人が劣等である、という認識が変わってしまったのです。 |
〔ふりがな〕 さて、まるじんの なかには、つよさこそ れっとうじんしゅと ゆうえつじんしゅの ちがいだと、しんじている ひとびとが おおぜいいました。なんせ、ほかの さんかくじんたちは まるじんになんびゃくねんも まけつづけ、ずうっと よわさを しょうめいしてきたからです。 つよさこそが れっとうじんしゅと ゆうえつじんしゅのちがいだと しんじている、おおくの まるじんたちのめに、のうそぐんのつよさは しょうげきてきでした。そしてかれらのめには、のうその ひとびとが れっとうじんしゅだとはみえなくなりました。つまり いちぶの まるじんたちの、さんかくじんが れっとうである、というにんしきが かわってしまったのです。 |
〔ふりがな〕 さんかくじん |
戦争は何年も続きました。 丸人の兵士たちが戦うのは、もちろん、勝つためです。戦争で死ぬなど、バカバカしいことに他なりません。
一方でノウソの兵たちが戦ったのは、勝つためではありません。 つまり、ノウソの兵たちの戦いの目的は、死にざまを見せることだったのです。 それは、劣等人種として扱われ、たまりにたまった怒りをぶつけることでもありました。 |
〔注〕 読者の中には「同期の桜」(咲いた花なら散るのは覚悟、見事散りましょ… 作詞:西條八十)といった軍歌を連想される方もいらっしゃるかもしれませんが、無関係です。 |
〔ふりがな〕 せんそうは なんねんも つづきました。 まるじんのへいしたちが たたかうのは、もちろん、かつためです。せんそうで しぬなど、ばかばかしいことに ほかなりません。 いっぽうで のうそのへいたちが たたかったのは、かつためでは ありません。はじめから かてるみこみがないせんそうです。まけてころされる うんめいは さけられません。ただ、しにいくかていで いじを・ゆうきを・ほこりを みせるぞと。つまり、のうその へいたちの たたかいのもくてきは、しにざまを みせることだったのです。それは、れっとうじんしゅ としてあつかわれ、たまりにたまった いかりを ぶつけることでもありました。 |
〔ふりがな〕 たまも つきた。さいごの とつげきだ |
激しい戦いの中で、丸人はノウソの兵たちの、あまりの闘志に震撼しました。 |
〔ふりがな〕 はげしい たたかいのなかで、まるじんは のうそのへいたちの、あまりの とうしに しんかんしました。 おりゃー! し、しぬことが こわくないのか!? |
さて丸人の中には、勇気こそが劣等人種と優越人種の違いだと、信じている人々が大勢いました。
なんせ一部の例外を除き、多くの三角人たちは簡単に征服されるばかりで、勇気を示したことがあまり無かったのです。
「こいつら、俺たちよりも、ずっと勇敢だ…」激しい戦闘の中で、それは否定しようがない実感でした。 勇気こそが劣等人種と優越人種の違いだと信じている多くの丸人たちの目に、ノウソの兵は劣等人種だとは見えなくなりました。 一部の丸人たちの、三角人が劣等である、という認識が変わってしまったのです。 |
〔ふりがな〕 さて まるじんのなかには、ゆうきこそが れっとうじんしゅと ゆうえつじんしゅの ちがいだと、しんじている ひとびとが おおぜいいました。 なんせ いちぶの れいがいをのぞき、おおくのさんかくじんたちは かんたんにせいふく されるばかりで、ゆうきを しめしたことが あまりなかったのです。 「こいつら、おれたちよりも、ずっとゆうかんだ・・・」 はげしい せんとうのなかで、それは ひていしようがない じっかんでした。 ゆうきこそが れっとうじんしゅと ゆうえつじんしゅのちがいだと しんじている おおくのまるじんたちの めに、のうそのへいは れっとうじんしゅだとは みえなくなりました。 いちぶのまるじんたちの、さんかくじんが れっとうである、というにんしきが かわってしまったのです。 |
〔ふりがな〕 さんかくじん |
しかし時間が経つにつれ、しだいにノウソ軍は追い詰められて行きました。 個別の戦闘ではどれほど強く勇敢であろうと、何十倍もの戦力差はいかんともしようがありません。 この戦争は、この星の征服者と辺境の小さな国との戦いなのです。 敗色が濃厚となったノウソの国は名誉ある降伏の道を模索しました。 けれど相手になどされません。劣等人種に名誉は最も不要なものです。 |
〔ふりがな〕 しかし じかんがたつにつれ、しだいに のうそぐんは おいつめられて いきました。 こべつのせんとうでは どれほどつよく ゆうかんであろうと、なんじゅうばいものせんりょくさは いかんともしようがありません。 このせんそうは、このほしの せいふくしゃと へんきょうのちいさなくにとの たたかいなのです。 はいしょくが のうこうとなったのうそのくには めいよあるこうふくのみちを もさくしました。 けれどあいてになど されません。れっとうじんしゅに めいよは もっともふようなものです。 |
〔ふりがな〕 のうそから こうふくこうしょうの もうしいれです こうしょうだと!? さるが なまいきなんだよ |
追い詰められたノウソの国は、ついに特攻を始めました。 特攻とは爆弾の命中精度を上げるために、飛行機や小さな潜水艦(魚雷)に乗って、敵に体当たりする、というものです。 |
この特攻にはノウソの人々だけではなく、仲間の三角人も自ら希望して参加しました。 |
〔ふりがな〕 おいつめられた のうそのくには、ついに とっこうをはじめました。 とっこうとは ばくだんのめいちゅうせいどを あげるために、ひこうきや ちいさな せんすいかん(ぎょらい)に のって、てきに たいあたりする、というものです。 このとっこうには のうそのひとびとだけではなく、なかまのさんかくじんも みずからきぼうして さんかしました。 |
それは死の危険がある、・・・どころか、必ず死ぬ、という戦法です。 |
特攻は丸人を心底驚かせました。 丸人は特攻を恐れただけではなく、ノウソの兵の自己犠牲の精神に仰天し、感動すらしてしまったのです。 |
〔ふりがな〕 それはしのきけんがある、・・・どころか、かならずしぬ、という せんぽうです。 とっこうは まるじんを しんそこおどろかせました。まるじんは とっこうをおそれただけではなく、のうそのへいの じこぎせいの せいしんに ぎょうてんし、かんどうすら してしまったのです。 |
さて丸人の中には、崇高な自己犠牲こそが劣等人種と優越人種の違いだと信じている人々がいました。
自己犠牲を払って反抗する三角人も、過去に存在はしたのですが、1万人を優に超える規模の特攻/自己犠牲を目撃するのは、 この星の歴史上で初めてのことだったのです。 そんな彼らには、爆弾と一緒に体当たりしてくるノウソの若者たちが劣等人種だとは思えなくなりました。 つまり、三角人が劣等である、という認識が変わってしまったのです。 |
〔ふりがな〕 さて まるじんのなかには、すうこうな じこぎせいこそが れっとうじんしゅと ゆうえつじんしゅの ちがいだと しんじている ひとびとがいました。じこぎせいを はらって はんこうする さんかくじんも、 かこに そんざいはしたのですが、1まんにんを ゆうにこえる きぼの とっこう/じこぎせいを もくげきするのは、このほしの れきしじょうで はじめてのこと だったのです。そんなかれらには、 ばくだんと いっしょに たいあたりしてくる のうそのわかものたちが れっとうじんしゅだとは おもえなくなりました。 つまり、さんかくじんが れっとうである、というにんしきが かわってしまったのです。 |
こうして、この星の人々(丸人も三角人も)の「三角人は劣等人種」という常識は、繰り返し打ち破られ、 大いに動揺したのです。実際、三角人を劣等だとは思えなくなった人々も少なからず存在しました。 |
〔ふりがな〕 こうして、このほしのひとびと(まるじんもさんかくじんも)の 「さんかくじんは れっとうじんしゅ」というじょうしきは、くりかえしうちやぶられ、 おおいに どうようしたのです。じっさい、さんかくじんを れっとうだとは おもえなくなったひとびとも すくなからず そんざいしました。 |
それでも丸人の多くは「三角人も同じ人間だ」と認めることは出来ませんでした。 なにせ彼らは自己正当化のために優生学 という学問まで作り、 過去数百年も「丸人は優越人種だ」とずうっと自分たちを騙し続けて来ているのです。 |
〔注〕 地球の優生学とは無関係です。なお、この心理については 絵本「悪夢からの逃走」を ご参照ください。 |
〔ふりがな〕 それでも まるじんのおおくは「さんかくじんも おなじにんげんだ」と みとめることは できませんでした。 なにせ かれらは じこせいとうかのために ゆうせいがくというがくもんまでつくり、かこすうひゃくねんも 「まるじんは ゆうえつじんしゅだ」と ずうっとじぶんたちを だましつづけて きているのです。 |
そんな丸人たちは、ノウソの兵の戦いぶりを「勇気の証明」ではなく、「狂暴性の証明」と考えました。 「他の三角人は弱く、勇気も自己犠牲の精神もない。一方でノウソは確かに違う。 しかしこいつら三角人が俺たち丸人と同じ立派な人間であるはずがない。 そうだ、ノウソは狂暴な野獣なんだ、間違いない!」と。 |
〔ふりがな〕 そんな まるじんたちは、のうそのへいの たたかいぶりを「ゆうきのしょうめい」ではなく、 「きょうぼうせいの しょうめい」とかんがえました。 「ほかの さんかくじんはよわく、ゆうきも じこぎせいの せいしんもない。 いっぽうで のうそはたしかに ちがう。 しかし こいつらさんかくじんが おれたちまるじんとおなじ りっぱなにんげんであるはずがない。そうだ、のうそは きょうぼうなやじゅうなんだ、まちがいない!」と。 |
〔ふりがな〕 のうそじん |
人は認識に基づいて行動します。
「ノウソは狂暴な野獣」 と認識した丸人は、「ノウソも同じ人間」と気づいた仲間の反対を押し切りノウソの国を爆撃し、 わずか数か月の間に女性も子供も無差別に何十万人も虐殺しました。 爆撃されたノウソの都市は200を超え、爆撃の回数はノウソの首都だけで100回を超えたのです。 |
〔ふりがな〕 ひとは にんしきにもとづいて こうどうします。 「のうそは きょうぼうなやじゅう」 とにんしきした まるじんは、「のうそもおなじにんげん」と きづいた なかまのはんたいを おしきり のうそのくにを ばくげきし、わずかすうかげつのあいだに じょせいもこどもも むさべつに なんじゅうまんにんも ぎゃくさつしました。ばくげきされた のうそのとしは 200をこえ、ばくげきの かいすうは のうそのしゅとだけで 100かいをこえたのです。 |
〔注〕 読者の中には原爆投下直後に書かれたトルーマン大統領の手紙を連想する方がいるかも知れませんが、これは地球の話ではなく 無関係です。 |
〔ふりがな〕 けものは けものとして あつかわないと |
過去数百年間にわたって、丸人は想像を絶する数の三角人を殺しています。しかしわずか数か月という短い期間に、これほど多くの三角人を無差別に虐殺したのは初めてのことでした。
矢も弾も尽き、何百万人も殺され、工場も破壊され、もうノウソの国に抵抗する力は残っていません。このまま抵抗を続けていては、滅亡させられた他の多くの三角人たちと同様に、ノウソ人も絶滅します。 ・・・4年間の激しい戦争の後、ノウソはついに全面的に降伏したのです。 |
こうして、この星の歴史上、最も激しかった戦争は、丸人連合軍の一方的な勝利で終了しました。 |
〔ふりがな〕 かこ すうひゃくねんかんに わたって、まるじんは そうぞうを ぜっするかずの さんかくじんを ころしています。 しかしわずか すうかげつという みじかいきかんに、これほど おおくのさんかくじんを むさべつに ぎゃくさつしたのは はじめてのことでした。 やもたまもつき、なんびゃくまんにんも ころされ、こうじょうも はかいされ、もう のうそのくにに ていこうするちからは のこっていません。 このまま ていこうをつづけていては、めつぼうさせられた ほかのおおくのさんかくじんたちと どうように、のうそじんも ぜつめつします。 ・・・4ねんかんの はげしい せんそうのあと、のうそはついに ぜんめんてきに こうふくしたのです。 こうして、このほしの れきしじょう、もっとも はげしかったせんそうは、まるじんれんごうぐんの いっぽうてきなしょうりで しゅうりょうしました。 |
この戦争での丸人の死者数は数万人でした。 一方で、ノウソ人の死者数は数百万人にものぼりました。 |
〔ふりがな〕 このせんそうでの まるじんのししゃすうは すうまんにんでした。いっぽうで、のうそじんの ししゃすうは すうひゃくまんにんにも のぼりました。 |
占領軍がノウソへ降り立ちました。 |
彼らの同胞を無数に殺しているのです。 丸人たちは偉そうにして焼野原に降り立ったものの、内心は怖くてたまりませんでした。 国家としての戦争は終了していても、激烈なテロ・個別の復讐が予想されたからです。 何しろ相手は狂暴な野獣なのです! |
〔ふりがな〕 せんりょうぐんが のうそへ おりたちました。 かれらの どうほうを むすうに ころしているのです。 まるじんたちは えらそうにして やけのはらに おりたったものの、ないしんは こわくてたまりませんでした。 こっかとしての せんそうは しゅうりょうしていても、げきれつな てろ・こべつのふくしゅうが よそうされたからです。 なにしろ あいては きょうぼうな やじゅうなのです! |
けれど驚いたことに、ノウソの人々は焼野原でも秩序だっており、一切の抵抗をしませんでした。 むろん、彼らが野獣というのは、丸人たちが勝手に作った妄想に過ぎません。 もともと彼らは、何百年も平和に穏やかに生きてきた民族です。 人の和を貴ぶ長い伝統と深い精神文化を持っていました。 |
「ノウソは野獣」と信じていた丸人の目にも、敗戦の焼野原で他人を思いやるノウソの人々が、狂暴な野獣にはどうしても見えませんでした。 |
〔ふりがな〕 けれど おどろいたことに、のうそのひとびとは やけのはらでも ちつじょだっており、 いっさいの ていこうを しませんでした。 むろん、かれらが やじゅうというのは、まるじんたちが かってにつくった もうそうにすぎません。 もともと かれらは、なんびゃくねんも へいわにおだやかに いきてきたみんぞくです。 ひとのわを たっとぶ ながいでんとうと ふかいせいしんぶんかを もっていました。 「のうそはやじゅう」としんじていた まるじんのめにも、はいせんの やけのはらで たにんをおもいやる のうそのひとびとが、 きょうぼうな やじゅうには どうしても みえませんでした。 |
結局、丸人は「ノウソの人々が狂暴な野獣である」という妄想すらも保持することが出来ませんでした。 |
こうしてついに、この星で数百年間続いた、「三角人は劣等人種」という妄想/常識が消滅したのです。 |
〔ふりがな〕 けっきょく、まるじんは「のうそのひとびとが きょうぼうなやじゅうである」という もうそうすらも ほじすることが できませんでした。 こうしてついに、このほしで すうひゃくねんかん つづいた、「さんかくじんは れっとうじんしゅ」という もうそう/じょうしきが しょうめつしたのです。 |
さあ、大変です! このままでは丸人たちは、悪人になってしまいます。 三角人を劣等人種だと錯覚し、ノウソ人にあらゆる嫌がらせをし、経済封鎖で追い詰め、それに怒ったノウソ人を今度は野獣だと錯覚し、何百万人も殺してしまったのですから! ど、どうすれば自己正当化が出来るのでしょう!? |
〔ふりがな〕 さあ、たいへんです! このままでは まるじんたちは、あくにんに なってしまいます。 さんかくじんを れっとうじんしゅだとさっかくし、のうそじんに あらゆるいやがらせをし、 けいざいふうさで おいつめ、それにおこった のうそじんを こんどは やじゅうだとさっかくし、 なんびゃくまんにんも ころして しまったのですから! ど、どうすれば じこせいとうかが できるのでしょう!? ひえええ~! このままじゃ、おれたちは あくにんに なってしまうよお! |
妄想を破壊され追い詰められた丸人たちは、自己正当化の方策を人間性への妄想と善悪の錯覚に求めました。
人間性への妄想というのは、「人間には闘争本能がある。だから常に対立し戦い合うのだ。 これは生存競争という、自然の法則だ」といった思い込みです。 どれほど大勢の人々を虐殺しても、生存競争や闘争本能のせいにすれば、 なんとなく自己正当化ができるような気がしませんか? |
〔ふりがな〕 もうそうを はかいされ おいつめられた まるじんたちは、じこせいとうかのほうさくを にんげんせいへの もうそうと ぜんあくのさっかくに もとめました。 にんげんせいへの もうそうというのは、「にんげんには とうそうほんのうがある。だからつねに たいりつし たたかいあうのだ。 これは せいぞんきょうそうという、しぜんのほうそくだ」といった おもいこみです。 どれほど おおぜいのひとびとを ぎゃくさつしても、 せいぞんきょうそうや とうそうほんのうのせいにすれば、なんとなく じこせいとうかが できるようなきが しませんか? |
それは、丸人が長く育ててきた「人と人とは対立するものだ」という思い込みの延長でもありました。 |
〔ふりがな〕 それは、まるじんが ながくそだててきた「ひとと ひととは たいりつするものだ」という おもいこみの えんちょうでも ありました。 |
さらに丸人は、善悪の錯覚も利用しました。 丸人は善悪の錯覚に依存し、いわば中毒して来たという、数千年にも及ぶ長い歴史を持っていたのです。その歴史の中で彼らは「世界は対立する善と悪から成立している」という奇妙な世界観を形成していました。 |
〔注〕 善悪中毒については、この平和の絵本集の、善悪をテーマとした多くの絵本の他、 善悪という怪物もご参照ください。 |
〔ふりがな〕 さらに まるじんは、ぜんあくの さっかくも りようしました。 まるじんは ぜんあくのさっかくに いそんし、いわば ちゅうどくしてきたという、すうせんねんにも およぶ ながいれきしを もっていたのです。 そのれきしのなかで かれらは「せかいは たいりつするぜんと あくから せいりつしている」という きみょうなせかいかんを けいせいしていました。 |
さて善悪を「善」と「悪」という2分類だと考えると、分類としては最も大雑把なので(1分類では分類になりません)、 誰でも何でも、どちらか好きな方に分類することが可能です。 そして敵を悪に分類すれば、敵を何百万人殺しても、「悪をやっつけただけ」と錯覚出来ます。 つまり破壊されてしまった「三角人は劣等」という妄想の代わりに、丸人たちは次のような妄想を作って、 自己正当化を図ろうとしたのです。 |
〔注〕 全世界の人々を悪へと分類することも、やろうと思えば簡単です。絵本「どっちだ?」をご参照ください。 |
〔ふりがな〕 さて ぜんあくを「ぜん」と「あく」という 2ぶんるいだと かんがえると、ぶんるいとしては もっとも おおざっぱなので(1ぶんるいでは ぶんるいになりません)、 だれでもなんでも、どちらか すきなほうに ぶんるいすることが かのうです。 そして てきを あくにぶんるいすれば、てきをなんびゃくまんにん ころしても、「あくをやっつけただけ」と さっかくできます。 つまり はかいされてしまった「さんかくじんは れっとう」という もうそうのかわりに、まるじんたちは つぎのような もうそうをつくって、じこせいとうかを はかろうとしたのです |
とはいえ、妄想は簡単には成立しません。 妄想をあたかも現実であるかのように自分自身を騙し、信じることが出来なければ、妄想は成立しないのです。 |
〔ふりがな〕 とはいえ、もうそうは かんたんには せいりつしません。もうそうを あたかも げんじつであるかのように じぶんじしんをだまし、しんじることが できなければ、もうそうは せいりつしないのです。 なあ、わしはあくまに みえるかね? |
そこで丸人たちは、自分を騙すために、手の込んだ儀式を行いました。 それはあたかも客観的な真実の追求であるかのように見せかけて(そうでなければ、信じることが出来ません)、 「ノウソが悪で丸人が善」という、あらかじめ決まった結論(=妄想)」を導き出すというものでした。 初めから結論は決まっているのですから、客観的な真実の追求は出来ません。 けれど、それがあたかも客観的な真実の追求のように見えなければ、自分を騙すことも出来ません。 |
〔ふりがな〕 そこで まるじんたちは、じぶんを だますために、てのこんだぎしきを おこないました。 それはあたかも きゃっかんてきなしんじつの ついきゅうであるかのように みせかけて (そうでなければ、しんじることが できません)、「のうそがあくで まるじんがぜん」という、 あらかじめ きまった けつろん(=もうそう)」をみちびきだす というものでした。 はじめから けつろんは きまっているのですから、きゃっかんてきな しんじつのついきゅうはできません。 けれど、それがあたかも きゃっかんてきなしんじつのついきゅうのように みえなければ、じぶんを だますことも できません。 |
「三角人が劣等」という妄想を壊されてしまったが故に、丸人は、このようにとんでもない無理をすることを強いられてしまったのです。このなんともややこしい儀式を丸人は2年以上も続けました。 それは丸人が自分自身を騙し妄想を信じるために、必要な時間であり必要な手続きでした。 |
〔ふりがな〕 「さんかくじんがれっとう」という もうそうを こわされてしまったがゆえに、まるじんは、このように とんでもない むりをすることを しいられてしまったのです。 このなんとも ややこしいぎしきを まるじんは2ねんいじょうも つづけました。 それはまるじんが じぶんじしんをだまし もうそうをしんじるために、ひつようなじかんであり ひつような てつづきでした。 へいわと じんどうへのつみ! |
さあ、これでなんとか妄想が成立しました。 次は、悪を憎めという教えに従い、妄想を補強します。 たとえ不安定な妄想でもそれに従うと、妄想をより深く信じることが出来るのです。 丸人は新たに作成した妄想に従い、ノウソのリーダー達を死刑にしました。 むろんこうすれば彼らに反論され妄想を脅かされることも心配しなくて済むのです、永遠に。 |
〔注〕 死者の声については、絵本「沈黙の声」を参照ください。 なおこの話はA級戦犯ともB級C級戦犯とも無関係です。 |
〔ふりがな〕 さあ、これでなんとか もうそうが せいりつしました。つぎは、あくをにくめ というおしえに したがい、もうそうを ほきょうします。 たとえ ふあんていなもうそうでも それにしたがうと、もうそうを よりふかくしんじることが できるのです。 まるじんは あらたにさくせいした もうそうにしたがい、のうその りーだーたちを しけいにしました。 むろん こうすれば かれらに はんろんされ もうそうを おびやかされることも しんぱいしなくてすむのです、えいえんに。 |
ノウソのリーダー達の遺体は灰にして海に捨ててしまいました。遺族だろうが同胞だろうが、悪を弔うことなど、決して許してはいけないことです。正義の味方は徹底的に悪を憎むのです。 さらに丸人は世界中で同様の儀式を繰り返し開き、1,000人ものノウソの軍人たちを死刑にしました。 |
・・・しかし、まだ不足でした。 |
〔ふりがな〕 のうその りーだーたちのいたいは はいにして うみにすててしまいました。 いぞくだろうが どうほうだろうが、あくを とむらうことなど、けっして ゆるしてはいけないことです。 せいぎのみかたは てっていてきに あくをにくむのです。 さらに まるじんは せかいじゅうで どうようのぎしきを くりかえしひらき、 1,000にんもの のうそのぐんじんたちを しけいにしました。 ・・・しかし、まだふそくでした。 |
妄想は、自分で信じることが出来なくなれば一瞬で壊れます。 「ノウソが悪」という妄想は、まだまだ脆いものでしかありません。 もしノウソに自由な言論を許せば、妄想は間違いなく破壊されてしまうでしょう。 何しろノウソには、過去数百年間もかけて丸人が作り上げた盤石な妄想(=三角人は劣等人種)を破壊したという、とんでもない前科があるのです。 どれほど警戒しても、警戒しすぎるということはありません。 そこで彼らは占領軍としての権力を使って、マスメディアや学校教育を通して繰り返し「ノウソは悪だ」と宣伝しました。 |
〔ふりがな〕 もうそうは、じぶんで しんじることが できなくなれば いっしゅんで こわれます。 「のうそがあく」という もうそうは、まだまだ もろいものでしかありません。 もし のうそに じゆうなげんろんを ゆるせば、もうそうは まちがいなく はかいされてしまうでしょう。 なにしろ のうそには、かこすうひゃくねんかんも かけて まるじんがつくりあげた ばんじゃくな もうそう(=さんかくじんは れっとうじんしゅ)を はかいしたという、とんでもない ぜんか があるのです。 どれほど けいかいしても、けいかい しすぎるということは ありません。 そこでかれらは せんりょうぐんとしての けんりょくをつかって、ますめでぃあや がっこうきょういくを とおして くりかえし「のうそはあくだ」と せんでんしました。 |
むろん反論を許さぬように、全ての本や新聞は検閲しました。 丸人は実は言論の自由を掲げており検閲するのは全くの自己矛盾なのですが、とてもそんなことを言っているゆとりはないのです。 |
〔ふりがな〕 むろん はんろんをゆるさぬように、すべての ほんや しんぶんは けんえつしました。 まるじんは じつはげんろんのじゆうを かかげており けんえつするのはまったくの じこむじゅんなのですが、とても そんなことをいっている ゆとりはないのです。 |
さらに、丸人たちはノウソの国へ、自分達の軍隊を恒久的に配置しました。 ノウソの首都圏も、丸人の軍事基地で包囲したのです。 |
〔注〕 銃口の前に、自由も民主主義も有りません。絵本「銃口の前」をご参照ください。 なおこれは、在日米軍基地とは無関係です。念のため。 |
〔ふりがな〕 さらに、まるじんたちは のうそのくにへ、じぶんたちのぐんたいを こうきゅうてきに はいちしました。 のうその しゅとけんも、まるじんの ぐんじきちで ほういしたのです。 |
軍事基地の中は治外法権とし、ノウソの立ち入りは警察といえども許しません。
こうすれば丸人は好きなときにノウソに対して実力行使が出来ます。 実力行使が出来るということは、いつでもノウソ国の中枢部―マスメディアや政治や司法など―へ巨大な圧力を掛けられるということです。 そして丸人の大切な妄想を壊しそうなノウソの政治家や言論人が出現した時には、実際、すぐに潰したのです。 |
〔ふりがな〕 ぐんじきちのなかは ちがいほうけんとし、のうその たちいりは けいさつといえども ゆるしません。 こうすれば まるじんはすきなときに のうそにたいして じつりょくこうしが できます。 じつりょくこうしが できるということは、いつでも のうそこくの ちゅうすうぶ―ますめでぃあや せいじや しほうなど―へ きょだいな あつりょくを かけられるということです。 そして まるじんの たいせつな もうそうを こわしそうな のうそのせいじかや げんろんじんが しゅつげんしたときには、じっさい、すぐにつぶしたのです。 |
実は丸人は言論の自由だけではなく、民主主義も旗印として掲げており、 意見を異にするノウソの政治家や言論人を潰すということは自己矛盾なのですが、全くそれどころではありません。 |
〔ふりがな〕 じつは まるじんは げんろんのじゆうだけではなく、みんしゅしゅぎも はたじるしとして かかげており、いけんをことにする のうそのせいじかや げんろんじんをつぶすということは じこむじゅんなのですが、まったく それどころではありません。 (じゆう) (みんしゅしゅぎ) |
こうして、「丸人は正義の味方。ノウソは悪」という妄想を強化するために、あらゆる方法を使って、 徹底的なノウソへのコントロールが行われました。その結果、ノウソは、次のような屈折を強いられました。 |
●「ノウソは悪で、丸人は正義の味方」とノウソは認めなければならない。そして、それはあたかもノウソが自由意思で判断したように見えなければならない(そうでなければ、丸人は自分自身を騙せず妄想を守れない)。 |
〔ふりがな〕 こうして、「まるじんは せいぎのみかた。のうそはあく」という もうそうを きょうかするために、あらゆる ほうほうをつかって、てっていてきな のうそへのこんとろーるが おこなわれました。そのけっか、のうそは、つぎのような くっせつを しいられました。 ●「のうそはあくで、まるじんは せいぎのみかた」と のうそは みとめなければならない。そして、それはあたかも のうそが じゆういしで はんだんしたようにみえなければならない(そうでなければ、まるじんは じぶんじしんをだませず もうそうをまもれない)。 |
●「ノウソは悪で丸人は正義の味方」に反する言論や報道は実質、禁止される。 しかし言論や報道の自由が、あたかもノウソに存在するように見えなければならない(そうでなければ、丸人は妄想を守れない)。 |
〔ふりがな〕 ●「のうそは あくで まるじんは せいぎのみかた」に はんする げんろんや ほうどうは じっしつ きんしされる。しかしげんろんや ほうどうのじゆうが、あたかも のうそにそんざいするように みえなければならない(そうでなければ、まるじんは もうそうをまもれない)。 ちかんよ! たいほする え!? あれ? かれって のうそのじしゅどくりつを しゅちょうした ひょうろんかだよね? はめられたの? こわいわね |
●ノウソの主権は制限され重要事項の決定は実質、丸人が行う。
しかし、あたかもノウソは国民主権の民主主義国で・法治国家で・自由意思を持つ独立国であるかのように見えなければならない(そうでなければ、丸人は妄想を守れない)。
●占領軍の駐留等も実質、強制だが、あたかもノウソが丸人に頼んで駐留して頂いているように見えなければならない(そうでなければ、丸人は妄想を守れない)。 |
〔ふりがな〕 ●のうその しゅけんは せいげんされ じゅうようじこうの けっていは じっしつ まるじんがおこなう。 しかし、あたかも のうそはこくみんしゅけんの みんしゅしゅぎこくで・ほうちこっかで・じゆういしをもつ どくりつこくであるかのように みえなければならない (そうでなければ、まるじんは もうそうをまもれない)。 ●せんりょうぐんの ちゅうりゅうなども じっしつ、きょうせいだが、あたかも のうそが まるじんに たのんで ちゅうりゅう していただいているように みえなければならない(そうでなければ、まるじんは もうそうを まもれない)。 |
さあ、ここまで徹底してコントロールすれば、さすがにもう、「正義の味方の丸人連合軍が、ノウソという悪の権化と戦った」という妄想を脅かされることは無いでしょう。 |
〔ふりがな〕 さあ、ここまで てっていしてこんとろーるすれば、さすがにもう、「せいぎのみかたの まるじんれんごうぐんが、のうそという あくのごんげと たたかった」という もうそうを おびやかされることはないでしょう。 よ、よかった た、たすかった ぜー、ぜー はあ、はあ |
さてノウソの苦難は、これで終わったわけではありません。 善悪の錯覚が支配する世界では、善悪を利用して強者の味方になることが可能です。 特に今回のように強者が脆い妄想に必死で依存しているような場合は、なおさらのことです。 |
〔ふりがな〕 さて のうその くなんは、これで おわったわけではありません。 ぜんあくの さっかくが しはいするせかいでは、ぜんあくを りようして きょうしゃのみかたになることが かのうです。 とくに こんかいのように きょうしゃがもろい もうそうに ひっしで いそん しているような ばあいは、なおさらのことです。 なあ、おれ、わるくないよな もちろんです! だってあいつらは、どうしようもない あくなんですから! そ、そうか。 おまえ、かわいい やつだな |
そこでノウソの敗戦後、大勢の人々がノウソを悪だと決めつけました。 有ること無いことを言い立ててノウソを非難すればそれだけで、丸人の妄想を補強でき味方だと思ってもらえるのです。 そこにはかつて一緒に戦った三角人の仲間も含まれていました。 |
〔ふりがな〕 そこで のうそのはいせんご、おおぜいの ひとびとが のうそを あくだと きめつけました。 あることないことを いいたてて のうそをひなんすれば それだけで、 まるじんのもうそうを ほきょうでき みかただと おもってもらえるのです。 そこには かつて いっしょに たたかった さんかくじんのなかまも ふくまれていました。 さべつしゅぎしゃ! きょうせいろうどう! れいぷま! あくまの じんたいじっけん むさべつばくげき しんりゃくしゃ ほりょぎゃくたい! せいどれい! だいぎゃくさつ |
さらにはノウソ人の中からも、同胞を悪だと裁くものが現れました。 こうして多くの人々が、ノウソへの非難を競い合ったのです。 |
〔ふりがな〕 さらには のうそじんのなかからも、どうほうを あくだとさばくものが あらわれました。こうしておおくのひとびとが、のうそへのひなんを きそいあったのです。 じょせいのてき はんざいしゃ へいわのてき ぐんこくしゅぎ さつじんしゃ うそつき りょうどのやぼう |
怯える強者に味方だと認めて貰う、その報酬は巨大なものです。 「ノウソが悪」と上手にアピールできた人々は、それぞれの立場で、社会的名誉、地位、お金、財産、権力、賠償金、ノウソが失った領土/国を獲得することが出来ました。 |
〔注〕 満州国、台湾、南北朝鮮、李承晩ライン、北方領土、シベリア抑留、反日運動、 マスメディア、日教組、公職追放、歴史問題、御用学者等、全て無関係です。 |
〔ふりがな〕 おびえる きょうしゃに みかただと みとめてもらう、そのほうしゅうは きょだいなものです。 「のうそがあく」と じょうずに あぴーるできたひとびとは、それぞれのたちばで、しゃかいてきめいよ、ちい、おかね、ざいさん、けんりょく、ばいしょうきん、のうそが うしなったりょうど/くにを かくとくすることができました。 こっちは われわれが もらう のうそが もんくをいうな! こっきょうらいん |
一方で、ノウソの味方/悪だと思われた人々は、それぞれの立場で、 社会的名誉、地位、お金、財産、権力、自由、命、家族、領土/国を失いました。 |
〔ふりがな〕 いっぽうで、のうその みかた/あくだと おもわれたひとびとは、それぞれの たちばで、しゃかいてきめいよ、ちい、おかね、ざいさん、けんりょく、じゆう、いのち、かぞく、りょうど/くにを うしないました。 すぐに ころさないだけ、ありがたくおもえ さぼるな! |
一方で、同胞を非難することを拒んだ、ノウソの生存者のほとんどは、ただ口をつぐみました。
なぜ戦ったのか。そこにはどんな怒りがあったのか。言いたいこと全てを腹の中に飲み込みました。
占領下で他に選択肢は無かったのですが、それだけではなく個人の会話レベルでも「言い訳をするのは恥ずかしい」という彼ら独特な美意識があったのです。 また、せめて自分達が悪だということを受け入れることで、これから長く占領下で生きることとなるノウソの子供たちへ、善悪の目隠しをしてあげようという、親心もあったのかも知れません。 |
〔ふりがな〕 いっぽうで、どうほうを ひなんすることを こばんだ、のうその せいぞんしゃの ほとんどは、ただくちを つぐみました。なぜ たたかったのか。 そこには どんないかりがあったのか。いいたいこと すべてを はらのなかにのみこみました。 せんりょうかで ほかにせんたくしは なかったのですが、それだけではなく こじんの かいわれべるでも「いいわけをするのははずかしい」という かれら どくとくな びいしき があったのです。 また、せめて じぶんたちが あくだということを うけいれることで、これから ながくせんりょうかで いきることとなる のうそのこどもたちへ、 ぜんあくの めかくしを してあげようという、おやごころも あったのかもしれません。 |
〔ふりがな〕 せんそうが おわったのに、なんで いつまでも がいこくの ぐんたいがいるの? それはね、われわれ のうそが わるかったから、しかたないんだよ |
それにしてもノウソの人々は、なぜもっと「自分たちは悪じゃない」と主張しなかったのでしょうか? |
何百万人も殺され、奴隷労働を強いられ、国土を占領され、悪というレッテルまで貼られたことに関して、ノウソ人の大半が、納得できたわけではありません。彼らが善悪の錯覚に全く無縁なわけでもありません。 |
〔ふりがな〕 それにしても のうそのひとびとは、なぜもっと「じぶんたちはあくじゃない」と しゅちょう しなかったのでしょうか? なんびゃくまんにんも ころされ、どれいろうどうを しいられ、こくどをせんりょうされ、あくというれってるまで はられたことにかんして、のうそじんの たいはんが、なっとくできたわけでは ありません。 かれらが ぜんあくのさっかくに まったく むえんなわけでもありません。 |
とはいえノウソには善悪をたかだか方便だと考える古い伝統が残っており、悪とされたことに関しては、負けたから仕方がない程度に考える人が多かったのです。
辺境の地にあるノウソには、多くの丸人が錯覚している教え; ●他人を愛せ は広まってはおらず、小さな子供は別として、神の呪いや地獄を恐れる人は少なかったのです。 |
〔注〕 悪魔や地獄の有無について、一切の主張をするものではありません。 |
〔ふりがな〕 とはいえ のうそには ぜんあくを たかだかほうべんだとかんがえる ふるいでんとうが のこっており、 あくとされたことにかんしては、まけたから しかたがない ていどに かんがえるひとがおおかったのです。 へんきょうの ちにある のうそには、おおくの まるじんが さっかくしている おしえ ―●たにんを あいせ ●ぜんを あいせ。あくと たたかえ ●あくにんは かみに のろわれ、じごくへ おちる ●いみもなく ひとをころすな ●いきょうとは あくまだ ●ひとは うまれながらに つみぶかい―はひろまっては おらず、 ちいさな こどもは べつとして、かみの のろいやじごくを おそれるひとは すくなかったのです。 |
逆に言えば、多くの丸人が善悪の妄想にどれほど深く中毒し、傷つき、苦悩しているのか、ほとんどのノウソ人には想像も出来なかったのです。 そのため、丸人がノウソを屈折させた理由も分からず、それは多くのノウソ人―特に若い世代―の心に暗い影響を与えました。 歪んだ社会に委縮し自虐的になったり、刹那主義・拝金主義に走ったり、絶望し自殺する人すらもいたのです。 |
〔ふりがな〕 ふわあ~ ねむい あくま? じごく? がきじゃあるまいし・・・ ぎゃくに いえば、おおくの まるじんが ぜんあくの もうそうに どれほどふかくちゅうどくし、きずつき、くのうしているのか、 ほとんどの ノうそひとには そうぞうもできなかったのです。 そのため、まるじんが のうそをくっせつさせた りゆうも わからず、 それは おおくの のうそじん ―とくに わかいせだい― のこころに くらいえいきょうを あたえました。 ゆがんだ しゃかいに いしゅくし じぎゃくてきになったり、せつなしゅぎ・はいきんしゅぎに はしったり、 ぜつぼうし じさつする ひとすらも いたのです。 |
さて、人の行動は認識に基づきます。
「人間には闘争本能があるので必ず戦う」と思い込んだ丸人の一部は、その後ももちろん、戦い続けました。 また自分たちを正義の味方だと認識した丸人の一部は、その後、悪人探しを続け、やはり悪(彼らの考える「悪」ということです)と戦い続けました。 |
〔ふりがな〕 さて、ひとの こうどうは にんしきに もとづきます。 「にんげんには とうそうほんのうがあるので かならずたたかう」とおもいこんだ まるじんのいちぶは、そのごももちろん、たたかいつづけました。またじぶんたちを せいぎのみかただと にんしきした まるじんのいちぶは、そのご、あくにんさがしをつづけ、やはりあく(かれらのかんがえる「あく」ということです)と たたかいつづけました。 |
妄想に取り憑かれ戦いをやめられない、そんな悲しい丸人の戦争にも、占領下のノウソは自由意思を装い協力しました。
その結果、丸人を怖くて非難できない人々は代わりにノウソを、「やっぱり悪だ」と一層非難することになったのです。 |
〔ふりがな〕 もうそうにとりつかれ たたかいをやめられない、そんなかなしい まるじんの せんそうにも、せんりょうかの のうそは じゆういしを よそおい きょうりょくしました。そのけっか、まるじんを こわくてひなんできないひとびとは かわりにのうそを、「やっぱりあくだ」と いっそうひなんすることに なったのです。 |
さてノウソが丸人に征服された後のことです。 この星に実に不思議なことが起こりました。 突然、多数の三角人の国が出現したのです。 |
それは、丸人が数百年かけて侵略し・夥しい数の人々を殺し・征服し・支配してきた、この星の全土に存在する、数多くの植民地でした。 その植民地が、なんと一斉に独立したのです。 |
〔ふりがな〕 さて のうそが まるじんに せいふくされた あとのことです。 このほしに じつにふしぎなことが おこりました。 とつぜん、たすうの さんかくじんのくにが しゅつげんしたのです。 まるじんが しはいしていた ちいき のうそのくに それは、まるじんが すうひゃくねんかけて しんりゃくし・おびただしいかずのひとびとを ころし・せいふくし・しはいしてきた、 このほしの ぜんどに そんざいする、かずおおくの しょくみんちでした。 そのしょくみんちが、なんと いっせいに どくりつしたのです。 |
時を同じくして、優生学も人種隔離政策も廃止されました。 三角人にも教育の機会や選挙権が与えられ、ある国では丸人が多数派でありながら、三角人の大統領すら誕生しました。 |
〔ふりがな〕 ときを おなじくして、ゆうせいがくも じんしゅかくりせいさくも はいしされました。 さんかくじん にも きょういくのきかいや せんきょけんが あたえられ、あるくにでは まるじんが たすうはでありながら、 さんかくじんの だいとうりょうすら たんじょうしました。 |
そして国際会議では、誰もが皆、戦前のノウソと同じことを主張するようになりました。 |
〔ふりがな〕 そして こくさいかいぎでは、だれもがみな、せんぜんの のうそと おなじことを しゅちょうするようになりました。 じんしゅさべつを ゆるすな! みなさん、じんしゅはびょうどうです! さんせい! そうだ! このほしに、まさに そうぞうを ぜっするへんかが しょうじたのです! |
この革命的な変化で得をしたのは、決して、三角人だけではありません。 三角人と丸人との結婚が容認されたため、三角人を愛した丸人も、強制的に引き裂かれることは無くなりました。 人種を超えて皆が自由に愛し合えるようになったのです。 |
〔ふりがな〕 このかくめいてきな へんかでとくを したのは、けっして、さんかくじん だけでは ありません。 さんかくじんと まるじんとの けっこんが ようにんされたため、さんかくじんを あいした まるじんも、きょうせいてきに ひきさかれることは なくなりました。 じんしゅを こえてみなが じゆうに あいしあえるように なったのです。 |
認識を間違えないこと(妄想の世界へ現実逃避をしないこと)は、その人にとっての利益となります。 間違った認識に基づいて同じ人間を差別し、辛い思いをさせずに済むようになったのは、丸人にとっても大きな救いでした。 それを実感した多くの丸人たちは、自ら率先して人種差別と戦うようになったのです。 |
〔参考絵本〕 認識を間違えないことが、その人の利益になることについては、 絵本「水と洗剤」をご参照下さい。 なお差別を善悪の問題として理解することは、差別解消を難しくするかもしれません。 絵本「差別は悪!?」をご参照ください。 |
〔ふりがな〕 にんしきを まちがえないこと(もうそうの せかいへ げんじつとうひを しないこと)は、 そのひとにとっての りえきとなります。まちがった にんしきに もとづいて おなじにんげんをさべつし、つらいおもいを させずに すむようになったのは、 まるじんにとっても おおきなすくいでした。それをじっかんした おおくのまるじんたちは、みずから そっせんして じんしゅさべつと たたかうようになったのです。 さべつは あくだ! さべつ はんたい! |
さて数百年もの間、全人類に絶大な苦悩をもたらした人種差別とそのシステムが一瞬にして消滅したのは、 人類全員が悪人から善人に、ある日突然、変身したからなのでしょうか? |
〔ふりがな〕 さて すうひゃくねんものあいだ、ぜんじんるいに ぜつだいな くのうを もたらした じんしゅさべつと そのしすてむが いっしゅんにして しょうめつしたのは、じんるいぜんいんが あくにんから ぜんにんに、あるひとつぜん、へんしんしたからなのでしょうか? ぜんじんるいの へんしん さべつしゅぎしゃ という あくにん びょうどうしゅぎしゃ という ぜんにん |
…そうではありませんね。 その変化は、全世界の人々が常識として共有していた「三角人は劣等」という妄想が消滅したことから、自然に、必然的に、生じたものです。 |
〔ふりがな〕 …そうではありませんね。 そのへんかは、ぜんせかいの ひとびとが じょうしきとして きょうゆうしていた「さんかくじんは れっとう」という もうそうが しょうめつしたことから、しぜんに、ひつぜんてきに、しょうじたものです。 |
人の行動は認識に基づきます。 |
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〔ふりがな〕 ひとのこうどうは にんしきに もとづきます。 ひとびとの にんしきを かえれば、せかいは かわります! |
〔ふりがな〕 これを みてごらん え? これってなに? これさ しんりゃくしゃのこと? それとも ぐんこくしゅぎ? |
〔ふりがな〕 ほかには、なにがみえる? まけるせんそうをした おろかもの むいみにたたかってしんだ へいしたち とっこうたいの むだじに・・・ |
〔ふりがな〕 ほかには? せんそうの ひさんさ むすうの ひとのいのちを うばったせんぱんたち |
〔ふりがな〕 ほかには? げんろんの じゆうも みんしゅしゅぎ もない だめなくに じぶんでじぶんのくにも まもれない だめなくに まるじんの ほごこく |
〔ふりがな〕 ほかには? たこくと なかよくすることもできない さんりゅうこく たこくにたいして じこしゅちょうができない、なさけないひとびと へいわを くちにしながら、 せんそうに きょうりょくする あくにんたち どうめいこくをたすけて、せんそうもできない だめなくに |
〔ふりがな〕 ほかには? ほかにはなにもみえないよ ぼくがみてほしかったのは、このやまさ え? やま? |
〔ふりがな〕 やまなんて、どこにあるの? |
あとがき |
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もしあなたがこの絵本に共感されたら、他の方にもご紹介いただきたくお願い致します。
本絵本は、自由にコピーして下さって結構です(商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます)。 また下記WEBからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
©Jun Togo 2014 |
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