異常者への手紙 |
―病的なSM、快楽殺人など 異常性欲に取り付かれた方へ― |
東郷 潤 |
ねえ、そこの君。 一人で、過激な妄想を膨らませているの? |
一つ、当ててみせようか。 最近、君がお気に入りの妄想は、1年前のものよりも過激なはずだよ。…それに、現実感も増しているね。 |
そして君は、妄想が日々成長していき、君の現実を侵食していくことに、とまどいを感じ絶望しかかっている。 僕は普通じゃないって。…君はもう精神病院には、行ってみたかい? それとも君はもう抵抗することを諦めて、「俺は人間じゃない。悪魔だ」って、信じつつあるのかな? |
では改めて聞くけれど、君の妄想がより過激に、そして、より現実的になる一方で、本物の現実がどんどん希薄になってきたのは、なぜだと思う? 何が現実で何が妄想か、君の混乱は増すばかりだ。 |
・・・そう、そんな風に、君は思ってるんだ。
でもね、君の妄想が過激に/現実的になって、その分、本物の現実が希薄になるのには、ちゃんとした理由があるんだよ。 もし君に興味があるなら、それを教えてあげる。 ・・・でも、そのためには君の協力が必要。ちょっと協力してくれるかい? |
協力して頂ける方だけ、 次頁へお進みください。 |
協力を約束してくれて、ありがとう。
じゃ、最初に、君の妄想が過激になる理由を教えよう。 そのためにお願いしたいのは、君のリミットを外すこと。 一切の理性を捨てること。 …そして、君に思いつく限りの、過激で邪悪な、君が一番興奮する妄想を作り出して欲しい。 妄想を実行しろ、と言ってるんじゃないよ。あくまでもこれは、想像だけさ。 |
どうせただの想像だからね、遠慮することなんかない。
実行できる/出来ないとか、道徳とか、理性とか、そんなものは全部捨てちまって、もっとも過激で邪悪な妄想を作って欲しい。
…さあ、思いっきり過激な想像、君が一番、興奮する、究極の妄想だよ。
出来たかい? |
…どうやら、君の究極の妄想、完成したみたいだね。 それじゃ、今、君が作り上げた妄想を、何度も何度も繰り返し想像して、心ゆくまで楽しんで欲しい。 期間は1週間。 1つ、お願いしておきたいのは、君が楽しむのは、あくまでも同じ妄想だということ。一切の細部をも変えないで欲しい。 |
それじゃ、1週間後にお会いしましょう。 |
…1週間、同じ妄想を続けてくれたね? ありがとう。 ではここでまた、君の心を当ててみせよう。 |
●君は、この1週間の間に、もっと興奮する妄想を思いついた。 |
当たったね。 それじゃもう一つ、当ててみせるよ。 |
●今の君は、1週間続けたその妄想で、もう、それほど興奮しない。 |
どう? これも図星だったでしょう? |
さあ、ここで1週間前のことを思い出して欲しい。 君が作った妄想は、最も過激で邪悪なものだったよね。その妄想に今、君は興奮しない。 ―それは過激さや邪悪さが足りないからじゃないよ。 じゃ、何が原因だと思う? |
答えは簡単さ。君はね、飽きちゃったんだよ。 |
どんなに面白い漫画だって、1週間、同じものを読み続けたら飽きちゃうだろ? 妄想だって、それと全く同じことさ。…少なくともその点に関しては、君はごく普通みたいだね。 そしてこれが、妄想が過激化する理由でもある。 ―どう? 意外に簡単だったろ? |
次は、「妄想」がより現実的になる一方で、「現実」が日々、希薄になっていく理由だよ。君の妄想と現実がグチャグチャになって、何がなにやら、分からなくなってきた理由さ。
それはね、妄想が現実的でなければ、困るからさ!! |
いいかい、妄想は君の娯楽、妄想は君の癒し、妄想は君の友人、妄想は君の恋人、妄想は君の愛!
その妄想が現実的じゃなかったら、空しいだろう!? 耐えられないよね!? そもそも君は現実社会の、残酷・冷たさ・暗黒から抜け出したくて、愛しの妄想を作ったんだ。 だけど君の周りの現実は、非情にも君の妄想とは無関係に動く。 どれほど君の妄想が大事なものなのか、「現実の人間」はさっぱり分かってくれない。 |
それどころか、妄想は妄想に過ぎないって、いつも君に思い知らせようとする。 |
つまり、現実は妄想の敵! そういう現実を君が認めてしまったら、 君の大好きな妄想が、せっかく育てた恋人が、たった一人の大切な、 大切な恋人 が、壊れちゃうんだ!! |
だから、君は愛する妄想/恋人のために、現実を否定する。
そして恋人の現実感を高めようと、恋人に命がけで尽くすんだ。
むろん、君が否定するたびに、現実は、現実感を失う。そして、妄想はその分、現実感を高めていく・・・。 |
わかるかい? 妄想がより現実的に、現実がより希薄になっていくのは、 君がやっていることなんだよ! |
ところで君はもう、自分の妄想を、少しずつ現実世界で実行し始めたのかい? ・・・そう、君にとって、妄想の彼女は現実に存在している。そしていつも甘く、君にささやき続けている。 |
それじゃここで、もう1つ、当ててみせよう。 |
君の妄想を現実に実行しても、本当に興奮したのは一瞬だけ。 そして結局、今も君は愛に乾いている。 |
どう、これも図星だったろ?
妄想を現実に実行してみて、すぐに何かが違うと君は思った。 もちろん、すっごく興奮する瞬間はあったさ。 でも、そのあと、すぐにシラケテしまった。何かが狂ってしまった。 |
そして、君は、今まで以上の空しさ/味気なさ/白々しさを感じてしまったね。
もしかすると、今度こそ、うまくやるって、君はそう思っているかい? あの時は、ちょっと失敗した。次やるときこそは、最高の快楽を得られるはずだって。 そして、君は今度こそと次の成功を夢見て、何回も君の妄想を実行し続けるかもしれない。 今度こそ、シラケないでやる。今度こそ、最後まで興奮する。今度こそ、最高の快楽を得る。 今度こそ、うまく行く。 |
でもね、残念ながら、君は永遠にうまくやれない… |
だって彼(女)が君に殺されたがっているなんて(○○されたがっているなんて) やっぱり君の、ただの想像だもの! |
そこの暗さ、分かるかい? ・・・君が今、いる場所のことだよ。 絶対的な孤独。ひりつくような愛への飢え。そこにいるのは、発狂するほど辛い。そこは地獄だ。だから君は、脱出しようと必死になって、もがいている・・・ |
でもね、それじゃ出れないよ。 ・・・君は出口に向かってないもの。 |
出口、見つけたいだろ? ・・・ならば、出口の見つけ方も教えてあげる。これが君に贈る僕の最後の話だから、真剣に聞いて欲しい。 ・・・さあ、君が愛する妄想、まるで太陽のように輝いているだろ? 君は長い年月、妄想を愛し続け、彼女を輝かすために、本当に必死でがんばって来たものね。 |
でもね、太陽の前で星は見えない。分かるだろ? |
もうちょっと暗くしてくれないと、本物の出口は見えないよ。 だから、 |
あとがき―異常者への手紙 |
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この絵本は、連作絵本「想像という現実」の7作目という位置づけで執筆したものです。
もし、あなたがこの絵本に共感されたなら、他の方にも読ませてあげていただければと思います。 本絵本は、自由にコピーして下さって結構です(商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます)。 また下記WEBからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
©Jun Togo 2010 |
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