誰がための競争 |
-失業、財政危機、生産性、 労働時間、過当競争の相関関係- |
東郷 潤 |
P.1
あるところに、自給自足で暮らしている村がありました。村人の数は50人です。 |
P.2
さて、人々が生きていくためには衣食住が必要です。 |
村人50人分の衣食住を生産するためには、50人全員が朝から晩まで毎日20時間も働く必要がありました。 合計すると一日1,000時間(50人×20時間)の労働です。 |
P.3
眠る間も無く、ああもうみんなクタクタです。 |
こんな辛い思いを子供たちにはさせたくない。 そう思った村人たちは、少しでも生産性を向上させようと、わずかな時間を見つけては必死に工夫を続けました。 |
P.4
人々の努力の結果、100年後には村の生産性は2倍に向上しました。 |
おかげで1,000時間の半分、つまり一日500時間の労働で村人50人全員の衣食住を生産することが可能になりました。
…ではここで質問です。
もしあなたが村人だったら、一人当たりの労働時間を短くしますか?
●いいえ、労働時間はそのままです→P.6へ |
〔注〕現実の選択肢は2つだけに限るものではありません。他にどのような選択肢があるかお考え頂ければ幸いです。 |
P.5
P.5から→ 労働時間はそのまま |
生産性が2倍になっても、村人たち50人全員が、朝から晩まで眠る間も無く毎日20時間働き続けました。 |
P.6
あれ? せっかく建てた家が空き家になっています。食べ物が余って腐っています。衣服も余って山積みです。 |
あらま、これでは、やる仕事がありません。 |
〔注〕話を単純化するために、新規の需要創設については触れていない。人々の生活が豊かになれば需要は増え多様化するだろう。 自給自足という前提を無くせば、村の外(海外)にも市場、つまり需要は存在する。しかしながら、需要は無条件に無限に増加するわけではない。 そもそも生産性が高まり、当該経済圏の生産量が人々の必要量を上回れば(経済システムに関わらず)生産過剰となり、「やる仕事」はなくなってしまう。 |
P.7
結局、村人の半分の25人が仕事にあぶれました。つまり、仕事を確保するという競争に負け、失業者になったのです。 |
P.8
競争に勝った、残りの25人は、前と同じ一日20時間労働で(25人×20時間=500時間)、生産を続けました。
一方、失業者にも衣食住は必要です。最低限の生活を保障しなくては、飢えて暴徒化する危険があるのです |
〔注〕失業者を貧困国へ置き換えれば、「暴徒化」は、「海賊行為・テロ・戦争」といった言葉で置き換えることが出来るだろう。 |
P.8-2
そこで村は職を持つ人々への税金を高くして、そのお金で失業者たちへ衣食住を提供しました。 |
〔注〕地球ベースで考えれば、競争力がない(失業者だらけの)貧困国への国際社会の援助と考えることもできる。 援助が少なければ(不適切なら)、社会不安、テロ、戦争の原因となり、大量の難民・餓死者が発生するかも知れない。 |
P.9
さらに村は、雇用を増やし失業者を減らすために、借金をして公共事業も行ないました。公共事業をしている間は失業者は減るのですが、やめるとまた増えてしまいます。 こうして公共事業の、あまり役立たない建造物と村の借金はドンドンと増えていきました。 |
〔注〕村を国として考えれば、「村の借金」は国債の発行と同じ。 |
P.10
村の借金が増えるにつれて、借金返済のための税金も上がります。 職を持つ人々は高い税金にあえぎながら、毎日20時間働き続けました。 彼らはみんなクタクタです。長時間労働と高い税金に苦しめられ、中には自殺する人もいるようです。 |
P.11
一方で失業者は最低の生活しか出来ません。未来への希望を失い、自殺する人もいるようです。 |
P.11-2
生活がこんなに苦しいのは、自分たちの競争力が弱いからでしょうか? 村人たちは、さらに必死でがんばって生産性を高めました。 |
しかし生産性が上がれば上がるほど、競争は厳しくなり、勝ち残る人数は減り、失業者が増え 、社会不安は増し、 村の借金が増え、税金が上がっていきました。 |
〔注〕村を国と考えた場合、生産性を高め他国への輸出を増やせば、国内の失業率はすぐには高まらない。 しかしそれは他国への失業の輸出となる可能性がある。他国での失業率アップは他国の社会不安の原因となり、 それを援助するためには自国の税負担を上げる必要がある。税負担が嫌で援助をしなければ、 いずれはテロ・戦争・難民といった形でツケが回ってくることとなる。 念のため付け加えると、問題は生産性アップや自由貿易にあるのではなく、 「競争は善」といった盲目的な信仰、いわば錯覚にあり、その底には敗北や不足に対する恐怖症の存在があると筆者は疑っている。 |
P.12
P.13
P.5から→ 労働時間を短縮する |
生産性が2倍になったので、村人たち50人全員が労働時間を半分に減らしました。 1日20時間労働が10時間に変わったのです。長時間労働から解放されて、村人たちはみな笑顔です。 |
P.14
更に村人たちは生産性の向上に努めました。科学技術の発展に力を尽くし、社会システムへも様々な工夫を施しました。
村人たちの努力の結果、さらに生産性が向上しました。最初の頃の10倍にもなったのです。50人分の衣食住を生産するために、 今ではわずか一日100時間の労働時間しか掛かりません。 こうして1日20時間労働が10分の1の、1日平均2時間労働となったのです。(100時間÷50人) |
P.15
P.15-2
人々は交代で長い休みを取り、思い思いにスポーツや学問や芸術や趣味にいそしみ、他の村の生産性向上も手伝い、
社会福祉や平和問題へも積極的に参加しています。
過当競争による倒産や首はなく、 失業者がいないので公共事業の無駄もなく、税金は安く、村に借金はありません。 犯罪も少なく自殺なんか誰もしません。 |
P.16
絢爛たる文化・芸術が咲き誇っています。 |
P.16-2
あとがき |
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もし、あなたがこの絵本に共感されたなら、他の方にも読ませてあげていただければと思います。 本絵本は、自由にコピーして下さって結構です(商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます)。 また下記WEBからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
©Jun Togo 2011 |
P.17
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