善悪の錯覚に関するQ and A
絵本集の補足として、Q&A(質問と回答)のページを用意しました。
Q: 善悪(を判断すること)って、悪いんですか?
A: そんな風に考えると、無限ループに入ってしまいますね。^^;
善悪という怪物の存在を知らずに、善悪を使えば(判断すれば)、 現実を錯覚する可能性が大きいでしょう。 現実を錯覚してしまえば、現実世界で望む結果を得ることは、難しくなります。 つまり、「悪い」というより、危険で損をする可能性が大きいのです。
・・・ここでもし、あなたが「危険で損だから、悪いのか」と思われたら、何もかも善悪で判断する心の癖をお持ちかもしれません。 その場合は、その心の癖と向き合って下さい。善悪の世界にどっぷりとつかったまま、善悪の問題点を客観視することは出来ません。
Q: 善悪が無かったら、この世の秩序が乱れませんか?
A: 「善悪」という言葉の意味次第です。 たとえば、法律、ルール、マナーなどの決まり事を全てひっくるめて「善悪」と表現することがあるようです。 もし法律もルールも無ければ、この世の秩序を守ることは難しくなるでしょう。 ご説明するまでも無く、たとえば道路交通法で「赤は止まれ。青(緑)は進め」と決まっています。この決まりが無ければ怖くて運転することも出来ません。
一方で「善悪」という言葉の意味が、善悪の錯覚あるいは、善悪に付着した「心理トリックの集合体」であるのなら、 そんなものを無くして秩序が乱れることは、基本的には有りません。
Q: 私の家族は善悪中毒です。 善悪の支配から解放してあげたいのですが、感情的に強く反発されてしまいます。どうしたらいいですか?
A: 善悪に限らず、中毒を断ち切るのは難しいことです。
もしし何か出来ることがあるのなら、して下さい。何も無ければ、ただ見守って頂ければと思います。時間は真実の味方なのですから。
ちなみに「どうしたらいいですか?」「いけないのですか?」といった言葉もとても曖昧です。
言語としての限界もあり曖昧さを避けることは難しいのですが、どんな意味で使っているのか時々立ち止まって意識することは、錯覚を避けるために有効です。
Q: 子供に善悪を教えたら、いけないのですか?
A: 法律、マナー、ルールなど、なぜそう決まっているのかという具体的な目的/理由を含めて、きちんと教えてあげて下さい。
「悪いことだから、するな」「良いことだから、しろ」では教えたことにはなりません。
悪いこととは「してはいけないこと」です。
「悪いことだからするな」は、「してはいけないことだから、するな」という意味であり、同じことを2回繰り返しただけです。
無意味な言葉の繰り返しではなく、(子供の理解力に合わせて)出来るだけ具体的に教えてあげて頂きたいのです。
火遊びを例に取れば、「あなたはまだ子供だから、つい忘れたり失敗することが多いの。火遊びをして失敗して火事になったら、あなたの家が無くなっちゃうのよ。お父さんもお母さんも死んじゃうかも」
というようにです。
逆にもしあなたに具体的な禁止の理由が分からず「悪いことだから悪いと言っているの!」としか子供に説明できないなら、
あなたご自身の心を見つめて、善悪の錯覚を探すことをお勧めします。
Q: 善悪を教える宗教はたくさんありますが、間違っているのですか?
A. 善悪の大切さを説いているのは、宗教に限りません。
教育機関も公共機関もメディアも個人も、世界中、あらゆるところで善悪の大切さが説かれています。
善悪という言葉には色々な意味があり、善悪の大切さを説く全ての人々が間違っている、ということでは有りません。
しかしながら一方で、怪物の存在に無自覚で善悪の大切さを説くことは危険です。それは怪物に餌をやることかもしれません。
宗教家に限らず全ての方々に、善悪の大切さを説く前に、善悪という怪物(=善悪という言葉に付着する心理トリックの集合体)
の存在に気づいて頂きたいと強く願っています。
Q: この世は戦いだ。善悪の錯覚になど気づいたら、闘争心が弱まり負けてしまうのではないか?
A. 残念ながら、その可能性は0ではありません。たとえば戦争をしているとき、敵を人間だと思えばどうしても殺すことに迷いが生じます。
もし敵を悪魔だと錯覚すれば、ずっと殺しやすくなります。無抵抗な一般市民を大虐殺することも簡単です。
そうすれば、勝率は高まるかもしれません。
逆に言えば、善悪という怪物を退治することで、人類が持つ膨れ上がった闘争心を沈静化することが出来るでしょう。
以上、ざっとQ and Aを書いてみました。
とはいえ、「考えれば考えるほど分からなくなる」のが善悪です。
それもそのはず、善悪という言葉に付着する心理トリック・心的条件付けは巨大なものです。
筆者が知るだけで、トリックの数は50個を超えています。
それらのトリックが、人々の潜在意識の闇の中で有機的に複雑に絡み合っているのです。
全体像については、本「善悪という怪物」をご覧ください。