| 一緒に行くよ |
| -事なかれ主義・出世主義・拝金主義- |
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| 東郷 潤 |
| 〔ふりがな〕 いっしょに いくよ ことなかれしゅぎ・しゅっせしゅぎ・はいきんしゅぎ とうごう じゅん |
P.1
| 子供に、お母さんが教えています。 |
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| 〔ふりがな〕 こどもに、おかあさんが おしえています。 ひとの いのちは、なによりも たいせつなのよ ねえ おかあさん。えほんは もういいから、ぼくしんぐの やりかたを おしえてよ。ぼく、おおきくなったら、ぼくさーに なりたいんだ |
P.2
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| 子供は怖くなって、夢を心の奥底に押し込みました。 |
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| 〔ふりがな〕 とんでもない、ぼくしんぐ だなんて！ なぐられて しんだら どうするの！ こどもは こわくなって、ゆめを こころの おくそこに おしこみました。 |
P.3
| それから何年か経ち、子供は学生になりました。彼に将来の夢はありません。勉強は嫌いです。 ・・・とうとう先生に叱られました。 |
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| 〔ふりがな〕 それから なんねんか たち、こどもは がくせいに なりました。 かれに しょうらいの ゆめは ありません。べんきょうは きらいです。 ・・・とうとう せんせいに しかられました。 こら、すこしは べんきょうしろ。ほーむれすに なったら、どうするんだ！？ このよは せいぞん きょうそう なんだぞ。 ぼーっと してたら、まけちゃうぞ |
P.4
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ホームレス？ 負ける？ ・・・彼は怯えて、その後、
いっぱい勉強をするようになりました。 お陰で、有名大学に合格することが出来ました。 |
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| 〔ふりがな〕 ほーむれす？ まける？ ・・・かれは おびえて、そのご、 いっぱい べんきょうを するようになりました。 おかげで、ゆうめい だいがくに ごうかくすることが できました。 |
P.4-2
| 彼は大学でも、大嫌いな勉強を一生懸命がんばりました。 | |
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| お陰で大学卒業時の成績はトップクラス。これでどんな就職先でも選べます。 | |
| 〔ふりがな〕 かれは だいがくでも、だいきらいな べんきょうを いっしょうけんめい がんばりました。 ホームレスになったら、どうするんだ？ おかげで だいがくそつぎょうじの せいせきは とっぷくらす。これで どんな しゅうしょくさきでも えらべます。 |
P.5
| 彼が選んだのは、生き残れる確率が最も高い、つまりは収入が高く安定した仕事です。 さあ、エリートとしての人生が始まりました。 |
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| 〔ふりがな〕 かれが えらんだのは、いきのこれる かくりつが もっとも たかい、つまりは しゅうにゅうが たかく あんていした しごとです。 さあ、えりーと としての じんせいが はじまりました。 |
P.5-2
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さて彼には仕事自体への興味も夢もありません。でも、出世には熱心で、お金儲けも好きでした。 お金があれば贅沢が出来ますし、高い医療費も払えます。高級スポーツジムにだって入れます。 つまり、生き残るチャンスが増えるのです。 |
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| 〔ふりがな〕 さて かれには しごと じたいへの きょうみも ゆめも ありません。 でも、しゅっせには ねっしんで、おかねもうけも すきでした。 おかねが あれば ぜいたくが できますし、たかい いりょうひも はらえます。 こうきゅう すぽーつ じむにだってはいれます。 つまり、いきのこる ちゃんすが ふえるのです。 |
P.6
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そこでチャンスを見つけては、利権を育て、ワイロも積極的に受け取りました。 年々、彼が出世するにつれ、受け取る金額も大きくなっていきました。 |
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| 〔ふりがな〕 そこで ちゃんすを みつけては、りけんを そだて、わいろも せっきょくてきに うけとりました。 ねんねん、かれが しゅっせするにつれ、うけとる きんがくも おおきくなっていきました。 |
P.6-2
| そしてもし万一、ばれそうになったら他人のせいにし、友達も裏切って切り抜けました。 だって子供の頃から夢を捨て、嫌いな勉強をし、つまらない仕事を我慢しているのです。こんなところで負けられません。 |
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| 〔ふりがな〕 そしてもし まんいち、ばれそうに なったら たにんの せいにし、ともだちも うらぎって きりぬけました。 だってこどもの ころから ゆめを すて、きらいな べんきょうをし、つまらない しごとを がまんしているのです。こんなところで まけられません。 ふせいの しょうこを、あいつの つくえの なかに いれておこう。 |
P.7
| 友人を裏切った嫌な気持ちは、心の底に押し込みました。 |
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| 〔ふりがな〕 ゆうじんを うらぎった いやな きもちは、こころのそこに おしこみました。 おれじゃない！ |
P.7-2
| あ、大変です！ 突然、大事故が発生しました！ |
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| 山も畑も町も海も、広大な場所が汚染されてしまいました。 |
| 〔ふりがな〕 あ、たいへんです！ とつぜん、だいじこが はっせいしました！ やまも はたけも まちも うみも、こうだいな ばしょが おせんされてしまいました。 |
P.8
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本当は、彼には人々を救うために出来ることがたくさん有ったのです。 でも、へたに関わって責任を取らされたら大変です。 |
| 〔ふりがな〕 たすけてください。このままでは、こどもたちが たいへんなことに なります！ ぼくのたんとうでは ないので・・・ ほんとうは、かれには ひとびとを すくうために できることが たくさんあったのです。でも、へたにかかわって せきにんを とらされたら たいへんです。 |
P.9
| 他人のためになんか、絶対にリスクは取れません。自分さえ幸せならそれで良いのです。この世は生存競争なのですから。 |
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| 人々への同情や申し訳ないという気持ちは、心の底に抑え込みました。 |
| 〔ふりがな〕 たにんのためになんか、ぜったいに りすくは とれません。じぶんさえ しあわせなら それでよいのです。このよは せいぞんきょうそう なのですから。 ひとびとへの どうじょうや もうしわけないという きもちは、こころの そこに おさえこみました。 |
P.9-2
| こうして夢を捨て、競争に勝ち、お金を儲け、友人を裏切り、他人を見捨て、リスクを取らなかった結果、地位も権力もお金も手に入れることが出来ました。 |
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| そして彼は、年老いて行きました。 |
| 〔ふりがな〕 こうして ゆめを すて、きょうそうに かち、おかねを もうけ、ゆうじんを うらぎり、たにんを みすて、りすくを とらなかった けっか、ちいも けんりょくも おかねも てに いれることが できました。 そして かれは、としおいていきました。 |
P.10
| 彼はもう老人です。ある日、病気になって入院してしまいました。入院先は、むろん一流病院の特等室です。 |
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| あれ？ 病室の外で、誰かが話をしているようです。 |
| 〔ふりがな〕 かれは もうろうじんです。あるひ、びょうきになって にゅういんして しまいました。にゅういんさきは、むろん いちりゅうびょういんの とくとうしつです。 あれ？ びょうしつの そとで、だれかが はなしをしているようです。 |
P.11
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| な、なんと彼の子供たちが、彼の遺産の分配を巡って話し合っているのです。 |
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| 〔ふりがな〕 ねえ、おとうさんの いしょはあるの？ かぶけんは だれが そうぞくするの？ まさか かくしごなんか いないよな な、なんと かれの こどもたちが、かれの いさんの ぶんぱいを めぐって はなしあっているのです。 ふざけるな、おれの おかね、おれの ざいさんを！ |
P.12
| ・・・でも、ふと気づきました。体が思いのほか弱っていることを。 |
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| 〔ふりがな〕 ・・・でも、ふと きづきました。からだが おもいのほか よわっていることを。 もしかすると、おれは しぬのか？ たいへんだ！ おれのおかねや ざいさん。 あのよにまで もって いけないじゃないか！ ちいも けんりょくも もっていけない。 ・・・でもそれじゃおれは あのよに なにをもっていけるんだ？ これほどがんばって せいこうしたのに、 あのよまで もっていけるものは、なにひとつ ないじゃないか！？ |
P.13
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| 〔ふりがな〕 ・・・いや、まてよ。 むかし、こころの そこに おしこんだ ゆめとか・・・ うらぎった ゆうじょうや、みすてた ひとびとへの どうじょう、 もうしわけないという きもちとか・・・ |
P.14
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| 〔ふりがな〕 ま、まさか！？ ぼくは きみだよ いつまでもどこまでも いっしょにいくよ |
P.15
あとがき; 一緒に行くよ |
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もし、あなたがこの絵本に共感されたなら、他の方にも読ませてあげていただければと思います。 本絵本は、自由にコピーして下さって結構です（商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます）。 また下記ＷＥＢからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
| ©Jun Togo 2012 |
P.16
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