スマホ用絵本「魔法のメガネ」

＠絵は印刷版のものを利用しています。見開きの絵は頁で分割されています。 分割前の絵はPC用頁をご覧ください。

魔法のメガネ

作：東郷潤 絵：近藤英明

〔ふりがな〕 まほうのめがね　さく：とうごうじゅん　え：こんどうひであき

注； この絵本には少し暴力的なシーンが含まれています。

ひろ～い宇宙のある星で男の子がお祈りをしていました。

〔ふりがな〕 ひろ～い　うちゅうの　あるほしで　おとこのこが　おいのりをしていました。

神様、どうか何が善いことで何が悪いことなのか教えて下さい。

〔ふりがな〕 かみさま、どうか　なにがよいことで　なにがわるいことなのか　おしえてください。

注； 地球上の宗教とは無関係です。

そこへ天使が現れました。「あなたは本当に善悪を知りたいの？」「はい、とっても！」

〔ふりがな〕 そこへ　てんしがあらわれました。「あなたは　ほんとうに　ぜんあくをしりたいの？」「はい、とっても！」

きっとあなたは「善悪のメガネ」を手に入れるでしょう。 でも、一度そのメガネをすると外すには、大きな愛と勇気が必要になるのよ。

〔ふりがな〕 きっとあなたは「ぜんあくのめがね」を　てにいれるでしょう。 でも、いちど　そのめがねをすると　はずすには、おおきなあいと　ゆうきが　ひつようになるのよ。

大丈夫です！！

〔ふりがな〕 だいじょうぶです！！

どこからともなくメガネが現れました。

〔ふりがな〕 どこからともなく　めがねが　あらわれました。

あれれ？　メガネをすると何もかもが白黒になっちゃいました！

わぁ！　面白い！！

〔ふりがな〕 あれれ？　めがねをすると　なにもかもが　しろくろに　なっちゃいました！　 わぁ！　おもしろい！！

この白い動物は、…ああ、この星のきっと犬ですね？　この黒い動物は羊かしら？

〔ふりがな〕 このしろい　どうぶつは、・・・ああ、このほしの　きっといぬ　ですね？　このくろい　どうぶつは　ひつじかしら？

海の生き物も白と黒。そっか。サケは食べても善いけど、鯨を食べたら悪なのかな？

〔ふりがな〕 うみの　いきものも　しろとくろ。そっか。さけは　たべてもよいけど、くじらをたべたら　あくなのかな？

注； この善悪の基準は、あなたのものとは異なるかも知れない。ひとつの例としてお考え頂きたい。以下同じ。

下の絵のなかで黒く見える人、これはもちろん悪人でしょう。

〔ふりがな〕 したのえの　なかで　くろくみえるひと、これは　もちろんあくにん　でしょう。

注； 人の肌の色/人種とはいっさい無関係です。念のため。

こら！　おまえは悪人だな！

なんで君はそんなひどいことを言うんだい？

〔ふりがな〕 こら！　おまえは　あくにんだな！ なんで　きみは　そんなひどいことを　いうんだい？

注； ここはP.10との見開きです。少年が指差しているのはP.10右下の男性です。

君には誰が悪い人で誰が善い人か分からないんだね。　え？　じ、実はそうなんだ。それで僕は悩んでいたんだ。

なら、祈ってごらん。善悪が分かるようになりたいって。

〔ふりがな〕 きみには　だれがわるいひとで　だれがよいひとか　わからないんだね。　 え？　じ、じつはそうなんだ。それでぼくは　なやんでいたんだ。 なら、いのってごらん。ぜんあくが　わかるように　なりたいって。

その人がお祈りすると、どこからともなくメガネが現れました。
	ああ、本当だ。すべての善悪がはっきりと分かるぞ。ありがとう！

〔ふりがな〕 そのひとが　おいのりすると、どこからともなく　めがねがあらわれました。 ああ、ほんとうだ。すべてのぜんあくが　はっきりとわかるぞ。ありがとう！

大勢の人が善悪のメガネを欲しがりました。

〔ふりがな〕 おおぜいのひとが　ぜんあくのめがねを　ほしがりました。

でも・・・、メガネをしていると白と黒しか見えません。それはとても退屈でした。

そこで、メガネを外してみました。

〔ふりがな〕 でも・・・、めがねをしていると　しろとくろしか　みえません。それはとても　たいくつでした。 そこで、めがねを　はずしてみました。

ああ、世界はなんて美しいのでしょう！

〔ふりがな〕 ああ、せかいは　なんて　うつくしいのでしょう！

注； P.16との見開きです。

あれ？　これは何だろう？　―何か赤いものがあります。

〔ふりがな〕 あれ？　これはなんだろう？　―なにかあかいものが　あります。

まわりを見まわしました。

お前は悪人だ！

〔ふりがな〕 まわりを　みまわしました。おまえは　あくにんだ！

その近くでも…

この子、悪い子なのよ！

〔ふりがな〕 そのちかくでも… 　このこ、わるいこなのよ！

うわぁあ―！

逃げようとしたら、赤いもので滑りました。

〔ふりがな〕 うわぁあ―！ 　にげようとしたら、あかいもので　すべりました。

赤いものは人の血でした。

〔ふりがな〕 あかいものは　ひとのちでした。

注； P.22との見開きです。

ギャアー！　こんなもの見たくない！　もう二度とメガネを外すものか！

〔ふりがな〕 ぎゃあー！　こんなもの　みたくない！　もうにどと　めがねを　はずすものか！

メガネを掛けると赤い血も火も、まるで魔法をかけたように見えなくなりました。

〔ふりがな〕 めがねを　かけると　あかいちもひも、まるで　まほうをかけたように　みえなくなりました。

見えなければ、忘れられます。

〔ふりがな〕 みえなければ、わすれられます。

人を焼く火も人が流す赤い血も、ずうっとずう～～っと忘れていられます。

〔ふりがな〕 ひとをやくひも　ひとがながす　あかいちも、ずうっとずう～～っと　わすれていられます。

注； P.28との見開きです。

注； 印刷版のものをそのまま載せています。なお「善悪中毒」は現在「善悪という怪物」へ改訂しています。

注； 印刷版の作成に辺りお世話になった方々です。 初版時点での協賛者ご芳名はこちらです。⇒

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