攻撃命令、 無制限! |
東郷 潤 |
〔ふりがな〕 こうげきめいれい、むせいげん! とうごう じゅん |
P.1
野球部の監督がキャプテンに命令をしました。 |
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〔ふりがな〕 やきゅうぶの かんとくが きゃぷてんに めいれいを しました。 おい、きゃぷてん。 あいつに、びんたを いっぱつ くれてやれ はい、かんとく |
P.2
キャプテンは仲間の頬を1回、ビンタしました。 |
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もちろん、怪我をさせるほど強くではありません。気合を入れることが目的ですから。 |
〔注〕 筆者はスポーツ教育における体罰の善悪について、一切、主張するものではない。 しかしながら、読者の中にはビンタの目的がそもそも分からないという方もいらっしゃるかと思うので、絵本中の監督の意図を以下、ご説明したい。 あなたが疲れて眠いとき、誰かにビンタされれば、その衝撃でアドレナリンが血中に放出され眠気がなくなるであろうことはご理解いただけると思う。眠気が無くなれば、集中力も高まるかも知れない。高い集中力は、スポーツ技術の向上にも怪我の防止にも重要だ。 しかしながら一方で、ビンタに関する、こうした「合意」が存在しない社会・人々にとっては、ビンタは不正な攻撃で野蛮な行為だとみなされるかも知れない。 繰り返すが、以上は絵本に登場する監督の考え方であり、筆者は体罰の善悪について、ここで一切主張するものではない。 |
〔ふりがな〕 きゃぷてんは なかまの ほおを いっかい、びんた しました。 かんとく からだよ もちろん、けがを させるほど つよく では ありません。きあいを いれることが もくてきですから。 |
P.3
・・・話は変わって、あるところに嫌な奴を誰かに殴ってもらおうと、いろいろな人に向かって、繰り返しささやいている少年がいます。 |
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注; このシーンについては、絵本「殴れるよ」をご参照ください。 絵も「殴れるよ」で使用したものを、そのまま使っています。 |
〔ふりがな〕 ・・・はなしは かわって、あるところに いやな やつを だれかに なぐってもらおうと、いろいろな ひとに むかって、くりかえし ささやいているしょうねんが います。 ねえ、しっている? ないしょの はなし なんだけどね。 あいつ ほんとうは、すごく わるいやつ なんだって |
P.4
もちろん僕たちは皆、子供の頃から、ずっとこう教えられています。 |
「あいつは、悪い奴」ということは、つまり「悪のあいつと戦おう」という攻撃命令が下された、・・・そう思う人も中にはいるかも知れません。 |
〔ふりがな〕 もちろん ぼくたちは みな、こどもの ころから、ずっとこう おしえられています。 せいぎ のために あくと たたかおう 「あいつは、わるい やつ」ということは、つまり「あくの あいつと たたかおう」という こうげき めいれいが くだされた、…そう おもう ひとも なかには いるかも しれません。 |
P.5
それではここで、黒板の先生と、最初の監督の攻撃命令を比べてみましょう。 |
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では、二人が命令した、攻撃方法は何でしょう? |
〔ふりがな〕 それではここで、こくばんの せんせいと、さいしょの かんとくの こうげきめいれいを くらべてみましょう。 おい、きゃぷてん。 あいつに、びんたを いっぱつ くれてやれ せいぎ のために あくと たたかおう では、ふたりが めいれいした、こうげき ほうほうは なんでしょう? びんただよ え? なにかしら? |
P.6
では誰に攻撃しろって、命令したのでしょう? |
では攻撃回数は何回でしょう? |
いつ、誰が、どうやって、何回、攻撃するか、黒板の先生は、監督のように具体的な命令をしていませんね。 |
〔ふりがな〕 では だれに こうげきしろって、めいれいしたのでしょう? きゃぷてんだよ。 え? だれかしら? では こうげき かいすうは なんかいでしょう? いっかいだよ。 え? なんかいかしら? いつ、だれが、どうやって、なんかい、こうげきするか、こくばんの せんせいは、かんとくの ように ぐたいてきな めいれいを していませんね。 |
P.7
さて、ある日、彼を悪い奴だと信じた人たちが、彼を殴りつけました。 |
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〔ふりがな〕 さて、あるひ、かれを わるい やつだと しんじた ひとたちが、かれを なぐりつけました。 このあくとうめ! やったぜ |
P.8
そして、彼を蹴りつけました。 |
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〔ふりがな〕 そして、かれを けりつけました。 このあくとうめ! |
P.9
そして、彼を棒で叩きました。 |
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〔ふりがな〕 そして、かれを ぼうで たたきました。 このあくとうめ! おれ、し~らない… |
P.10
お分かりでしょうか? 誰かを「悪だ」というのは、その人に対する具体的な、つまりは限定的な攻撃命令ではありません。 ですから・・・ |
・・・そんな風に、錯覚されることも、時には、あるかもしれません。 |
〔ふりがな〕 おわかりでしょうか? だれかを 「あくだ」というのは、その ひとにたいする ぐたいてきな、つまりは げんていてきな こうげき めいれいでは ありません。 ですから、 あくだ! これは、むせいげんの こうげき めいれい …そんな ふうに、さっかくされることも、ときには、あるかもしれません。 |
P.11
こうして人類は、時に異常なまでに残虐化するのではないでしょうか。 |
〔ふりがな〕 こうして じんるいは、ときに いじょうなまでに ざんぎゃくか するのではないでしょうか。 |
P.12
あとがき -絵本「攻撃命令、無制限! |
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善悪という考え方/言葉は、本当に様々な錯覚を生み出します。
そして、これらの錯覚は人類の長い歴史の中で、多くの悲劇をもたらして来たのです。
もし、あなたがこの絵本に共感されたなら、出来るだけ多くの方に、読ませてあげていただければと思います。 本絵本は、自由にコピーして下さって結構です(商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます)。 また下記WEBからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
©Jun Togo 2011 |
P.13
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