罪と罰の イメージ |
東郷 潤 |
〔ふりがな〕 つみと ばつの いめーじ とうごう じゅん |
★絵本としては少し難解かもしれません。絵本の論文だとお考え下さい。 |
P.1
みなさんは 罪に、どんなイメージを持っているでしょう? |
本当の罪とは何か? ・・・そんな難しい話ではありません。宗教的な真実や神様とも無関係な話です。 |
〔ふりがな〕 みなさんは つみに、どんな いめーじを もっているでしょう? つみ ほんとうの つみとは なにか? ・・・そんなむずかしい はなしでは ありません。しゅうきょうてきな しんじつや かみさまとも むかんけいな はなしです。 |
P.2
ただ単に人々が持つ、言葉のイメージの話です。 |
これが分かると罪という言葉が人間に与えるであろう「心理的な効果」を推測できるのです。 |
〔ふりがな〕 ただ たんに ひとびとが もつ、ことばの いめーじの はなしです。 つみ これが わかると つみということばが にんげんに あたえるであろう「しんりてきなこうか」を すいそくできるのです。 |
P.3
罪は悪と密接に関係した言葉、そんなイメージはありませんか。 |
もし悪という言葉が無ければ、罪という言葉は存在すらしないかも? |
〔ふりがな〕 つみは あくと みっせつに かんけいした ことば、そんな いめーじは ありませんか。 あく→つみ もし あく ということばが なければ、つみ ということばは そんざいすら しないかも? |
P.4
「罪はその人が積み重ねた悪」、そんなイメージも有りませんか? |
実際、「奴は、悪そのもの」と言っても、「奴は、罪そのもの」とは言いません。 人は悪になれても、罪にはなれないのかも知れません 。 |
〔注〕 厳密な話ではありません。「罪深い人=とても悪い人」というイメージも成立するでしょう。 また原罪といえば、より人に近いイメージが生まれそうです。なお宗教的真理とは無関係な話ですので念のため。 〔ふりがな〕 「つみは そのひとが つみかさねた あく」、そんな いめーじも ありませんか? あく あく あく あく あく じっさい、「やつは、あくそのもの」といっても、「やつは、つみそのもの」とはいいません。 ひとは あくに なれても、つみには なれないのかもしれません。 |
P.5
罪には人が背負うものというイメージもありますね。一方で悪は背負うものではありません。 悪は、罪よりも人・行為の本質というイメージでしょうか。 |
いかがですか? ここまでは、あなたが持つ罪のイメージと近いでしょうか? |
〔ふりがな〕 つみには ひとが せおうもの といういめーじも ありますね。 いっぽうで あくは せおうものでは ありません。 あくは、つみよりも ひと・こうい の ほんしつという いめーじでしょうか。 つみ あく いかがですか? ここまでは、あなたが もつ つみの いめーじと ちかいでしょうか? |
P.6
次は罪と善悪の錯覚との関係です。もし、罪が悪の積み重ねというイメージなら、善悪の錯覚も積み重ねられるかもしれません。 |
[注] 善悪の錯覚の詳細については、本「善悪という怪物」なり、本WEBの他の絵本をご参照ください。 〔ふりがな〕 つぎは つみと ぜんあくの さっかく とのかんけいです。 もし、つみが あくの つみかさね という いめーじなら、 ぜんあくの さっかくも つみかさねられる かもしれません。 あく←さっかく あく←さっかく あく←さっかく |
P.7
ここでいう錯覚とは、善悪の二分類に集中して、異なる事象(とその詳細)を、類似のものとして見てしまうということです。 |
〔ふりがな〕 ここで いう さっかくとは、ぜんあくの にぶんるいに しゅうちゅうして、ことなる じしょう(と そのしょうさい)を、 るいじのもの として みてしまう ということです。 たいせつなのは、ぜんあく! |
P.8
[参照絵本] 悪いことは、悪い 〔ふりがな〕 わるいことはわるいんだ! |
P.9
次は罪と罰との関係です。 罰は罪に対して下すものというイメージも、多くの方がお持ちですね。 |
その場合、罰にもまた善悪の錯覚が引き継がれる可能性があります。 |
〔ふりがな〕 つぎは つみとばつとの かんけいです。ばつは つみに たいして くだすものという いめーじも、おおくのかたが おもちですね。 ばつ そのばあい、ばつにも また ぜんあくの さっかくが ひきつがれる かのうせいが あります。 |
P.10
つまり、罪を罰する時、具体的な罪の中身は、見えにくくなるかもしれないということです。 |
〔ふりがな〕 つまり、つみを ばっするとき、ぐたいてきな つみの なかみは、みえにくく なるかもしれないということです。 おい、しんじん。ここが じゅうざいにんようの かんごくだ。 はい。かれは なんの つみを おかしたのですか? しらん。とにかく すごく おもい つみだよ |
P.11
改めて考えると、原因も事象も異なる罪への罰が、全て一緒って不思議に感じることはありませんか? | ||||||||||||||||||||||||
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〔ふりがな〕 あらためて かんがえると、げんいんも じしょうも ことなる つみへの ばつが、すべて いっしょって ふしぎに かんじることは ありませんか? ざいめい けいばつ きょうかつざい 10ねんいかのちょうえき さぎざい 10ねんいかのちょうえき とくべつはいにんざい 10ねんいかのちょうえき かくせいざいしょじ 10ねんいかのちょうえき せっとうざい 10ねんいかのちょうえき きょうせいわいせつざい 10ねんいかのちょうえき けんじゅうなどふほうしょじ 10ねんいかのちょうえき ゆういんこうぶんしょぎぞうざい 10ねんいかのちょうえき きょぎこくそざい 10ねんいかのちょうえき じどうばいしゅんなどもくてきじんしんばいばいなど 10ねんいかのちょうえき でんしけいさんきしようさぎざい 10ねんいかのちょうえき |
P.12
罪の種類や原因で、対応を変える必要は無いのでしょうか。 |
重要なのは、罪を罰して「償わせる」ことなのでしょうか。 |
〔ふりがな〕 つみの しゅるいや げんいんで、たいおうを かえる ひつようは ないのでしょうか。 じゅうようなのは、つみを ばっして「つぐなわせる」こと なのでしょうか。 |
P.13
では「罪を償う」という言葉のイメージについて考えてみましょう。 |
罪の償いのイメージは、償えばその分罪が軽くなる。 十分に償えば罪が消える・許される。 罪が消えれば罪人は普通の人に戻る、でしょうか。 |
〔ふりがな〕 では「つみをつぐなう」という ことばの いめーじ について かんがえてみましょう。 つみの つぐないの いめーじは、つぐなえばそのぶん つみが かるくなる。 じゅうぶんに つぐなえば つみが きえる・ゆるされる。 つみが きえれば つみびとは ふつうのひとに もどる、でしょうか。 |
P.14
では具体的に、刑務所に犯罪者を閉じ込めると何が普通に変わるのでしょう? |
痴漢も強盗犯も麻薬中毒者も、自動的に普通の人になるのでしょうか? |
〔ふりがな〕 では ぐたいてきに、けいむしょに はんざいしゃを とじこめると なにが ふつうに かわるのでしょう? ちかんも ごうとうはんも まやくちゅうどくしゃも、じどうてきに ふつうの ひとに なるのでしょうか? |
P.15
収監は社会からの隔離であり、罰の恐怖は再犯防止に有効なこともあるでしょう。 でもそれは犯罪の原因解決や被害者救済や犯罪者の更生ではありません。 |
閉所恐怖症は増えそうですが・・・ |
〔ふりがな〕 しゅうかんは しゃかいからの かくりであり、ばつの きょうふは さいはんぼうしに ゆうこうなことも あるでしょう。でもそれは はんざいの げんいん かいけつや ひがいしゃきゅうさいや はんざいしゃの こうせい ではありません。 へいしょ きょうふしょう はふえそうですが・・・ |
P.16
実際、罪の償いという言葉に関して、明確なイメージをお持ちの方は、 少ないかもしれません。 よく分からない罪の償いのために罰するのなら、罰の目的も結局は何なのか、よく分かりませんね。 |
目的が不明なら、その効果も見えません。 効果が見えなければ、たとえば再犯防止の工夫などもなかなか進まないかも知れません。 |
〔ふりがな〕 じっさい、つみの つぐないという ことばにかんして、めいかくな いめーじを おもちのかたは、すくないかも しれません。 よくわからない つみのつぐないの ために ばっするのなら、 ばつの もくてきも けっきょくは なんなのか、よくわかりませんね。 いかりのかいほう みせしめ くちふうじ かくり せいぎ ふくしゅう こうせい しゃかいちつじょのいじ はんざいよぼう つぐない ていちんぎんのろうどうりょく こっかのいしん ぞうきていきょう もくてきが ふめいなら、そのこうかも みえません。こうかが みえなければ、たとえば さいはん ぼうしの くふうなども なかなか すすまない かもしれません。 |
P.17
さらに、罪には別の錯覚効果もありそうです。 それは人への攻撃を、あたかも罪への攻撃のように錯覚するというものです。 |
人に対して残酷なことをするのは辛いものです。 罪のイメージを利用した錯覚は、この辛さを軽減するかも知れません。 |
〔ふりがな〕 さらに、つみには べつの さっかくこうかもありそうです。 それは ひとへのこうげきを、あたかも つみへの こうげきのように さっかくする というものです。 おれは つみを ばっしただけだ! ひとに たいして ざんこくなことを するのは つらいものです。 つみの いめーじを りようした さっかくは、このつらさを けいげん するかもしれません。 |
P.18
とはいえ罪しか見なければ、罰の膨大な副作用は見えなくなります。 |
〔ふりがな〕 とはいえ つみしか みなければ、ばつの ぼうだいな ふくさようは みえなくなります。 |
P.19
もちろん、人々が持つ罪のイメージは全く同じではありません。 それでも罪のイメージに邪魔をされ、大事なこと (罰の副作用、犯罪の原因解決、被害者の救済など)が 見えなくなっている人は、きっと少なくないでしょう。 |
罪という言葉、 少し使うのをやめて みませんか? |
〔ふりがな〕 もちろん、ひとびとが もつ つみの いめーじは まったく おなじでは ありません。 それでも つみの いめーじに じゃまをされ、だいじなこと (ばつの ふくさよう、はんざいの げんいんかいけつ、ひがいしゃの きゅうさい など) がみえなくなっている ひとは、きっと すくなくないでしょう。 つみ ということば、 すこし つかうのを やめてみませんか? |
P.20
あとがき |
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もし、あなたがこの絵本に共感されたなら、他の方にも読ませてあげていただければと思います。
本絵本は、自由にコピーして下さって結構です(商業出版はじめ金銭的な授受を伴う場合を除きます)。 また下記WEBからは、東郷潤の他の絵本やメッセージをダウンロードすることが出来ます。 www.j15.org |
©Jun Togo 2017 |
P.21
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