「…だけど、謝罪しようにも、相手はもう死んでいるんだぞ!」
「相手が生きていようが死んでいようが関係ないわ。謝罪は、自分のためにするものなのよ。 あなたを苦しめているのは、悪霊なんかじゃないわ。あなたは、あなた自身の愛と戦っているの。-まだ、分からないの? 早く、目を開けなさい!」 「・・・」 彼は長いこと、黙りこみました。 「花を手向けるだけで良いのか?」
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〔ふりがな〕 「…だけど、しゃざい しようにも、あいては もう しんでいるんだぞ!」 「あいてが いきていようが しんでいようが かんけいないわ。 しゃざいは、じぶんのために するものなのよ。 あなたを くるしめているのは、あくりょう なんかじゃないわ。 あなたは、あなたじしんの あいと たたかっているの。-まだ、わからないの? はやく、めをあけなさい!」 「・・・」 かれはながいこと、だまりこみました。 「はなを たむけるだけで よいのか?」 「そうよ」 「はなを たむけても、・・・おれは、じごくに おちないのか?」 「あたりまえでしょう!」 「ほんとうに、はなをたむけるだけで、らくになれるのか?」 「なれるわ。…たった はないちりんのことで、なにを こわがっているの?」 「…」 「いったいだれが、えいえんに じぶんじしんのあいに さからえるというの?」 |