在日米軍基地・施設の地図; 日本独立の選択;; P.3

在日米軍基地・施設を日本地図上に表示してみました。

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では実質的/軍事的にはどうでしょう? 以下の図は、日本にある在日米軍基地・施設です。全国計 131施設・区域 1,024,401千平方メートル〔注〕、これは東京ドーム2万個超の広さです。
在日米軍基地・施設の絵(イラスト)

〔注〕
●この数字には、日米地位協定第2条第4項(b)に基づき、米軍が一定の期間を限って使用している施設及び区域を含みます(青字表示部分)。
●在日米軍施設・区域(専用施設)の面積は、306,226千平方メートル。東京ドーム換算で6,550個弱となります(計算式は306,226,000÷46,755=約6,550)。
●情報ソースは 防衛省HPの「在日米軍施設・区域別一覧」および「在日米軍施設・区域(専用施設)都道府県別面積」から(平成27年10月時点)。

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一定の期間を限って使用とは?(2016年3月 注意書き追記)

 上図は、防衛省のHPの在日米軍施設・区域別一覧という表に出ているものを、そのまま日本地図上に落としたものだ。
 次に当該頁の一部を示すが、括弧書きの部分が上図の青字部分と対応している。

防衛省のHPの在日米軍施設・区域別一覧

 この括弧書きについて、当該頁には次のように説明されている。

在日米軍施設・区域別一覧の注意書き一部

 「一定期間を限って使用している」とは具体的にどういうことなのだろう?  たとえば、表中2番目で括弧書きされている(東千歳駐屯地)をWikiで見ると自衛隊の基地のようだ。
 我らが日本国の防衛省のHPに米軍施設として括弧書きで表示される、「一定の期間を限って米軍が使用する自衛隊の基地」とは、何を意味するのだろう?

 ・・・調べてみた。
 かなり長い文章になるが、これもまた、絵本のテーマと関わりがあることなので、以下、関心がある方はお付き合いください。

 さて防衛省HPには「日米地位協定第2条第4項(b)に基づき」とあるので、地位協定(後記参照)にあたってみた。 そこには次のように書かれている。 「(b) 合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては 合同委員会は、 当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。」

 やはりここにも、「一定の期間を限って使用すべき」とあるだけで、具体的な記載はない。 一つの可能性としては、自衛隊との共同演習で、自衛隊の基地を米軍が一時的に間借りした、ということかも知れない。 しかしながら、過去に青字部分の自衛隊基地を使用して共同演習をしたことがあったにしても、 それを「一定の期間を限って使用している」「一定の期間を限って使用すべき」と現在形で書くことはない。 第一、共同演習をしただけで、自衛隊の基地を、米軍施設として防衛省が表示することは無いだろう。 それにしても「使用すべき」というのは、ずいぶんと変わった表現だ。いったい何を意味しているのか?

 やはり問題は、「合同委員会」とやらで、何を決めているか、だ。  次に防衛白書を調べてみた。
 毎年更新されている防衛白書のデータ量は膨大なものであり、色々な検索ワードで調べてみたが、筆者には結局 「一定の期間を限って、米軍が使用する自衛隊の基地」とは何なのか見つけ出すことは出来なかった。問題の「合同委員会」の議事録も探すことは出来なかった。

 次にネットサーフィンで調査してみた。その結果、最初に気づいたのは、防衛HPで言っている「合同委員会」が、かの有名な「日米合同委員会」だ、ということだ。 日米合同委員会の議事録となれば、昨年12月には、NPO情報公開クリアリングハウスによって、日米合同委員会の議事録の情報公開訴訟の裁判が起こされている。 公開請求の裁判の対象は、1952年と1960年の議事録とのことであり、50年以上前のものだ。これでは議事録そのものにあたることはかなり難しいだろう。

  それでも諦めずに色々探していると、外務省のHPに、次の文言を見つけた。 そこには「公表されている日米合同委員会合意」なるリンクも存在する。

外務省HP 日米地位協定Q and A

 さすがは日本国の外務省だ! 日本国民に公開できるものは、きちんと公開してくれているのだ。

 そこで「公表されている日米合同委員会合意」をあたってみた。 ・・・正直に書くと呆れてしまった。 本件関連の第二条の運用に関しては、1952年以降(2016年3月現在までで、64年間)で、 なんとわずか9本の文書しか公表されていないのだ(「公表されている日米合同委員会合意」のリンク先を見る限り)。 (2023.5追記 久しぶりにこの頁を覗いてみたところ、公表された文書の数は約130本に増加していた。ただ、「一定の期間を限って使用すべき」が何を意味するのかについては分からなかった。)

 公開された9本の文書についても、一つの例外を除いてほとんど実質的な中身が無いのだ。 例外は、「沖縄の施設・区域(5・15メモ等)」(日本語版は仮訳となっている。1972年の文書なので、44年間仮訳のままだ)で ページ数は247ページ。これは1972年5月のものであり、沖縄が米国から日本に復帰した時のものだ。  

 結局、「一定の期間を限って米軍が使用する自衛隊の基地」とはそもそも何なのか、 「一定の期間を限って使用すべき」とは何を意味しているのか、さっぱり分からなかった。
 以下、外務省HP上で公表されている文書の量を示す。

文 書 の 名 前文 書 の 量
施設及び区域の提供(1952年7月)6行のみ
沖縄の施設・区域(5・15メモ等)(仮訳(1972年5月)247頁 (英語版は310頁)
訓練空域使用の通報(1972年12月)3行のみ
施設・区域の使用条件等に関する事項(1978年5月)8行のみ
NLPに関する硫黄島の使用(1997年2月)16行のみ
キャンプ・ハンセンの104号線越え訓練の移転(1997年6月)25行
読谷飛行場から伊江島飛行場へのパラシュート降下訓練の移転(1999年10月)1ページ
米軍再編に係る訓練移転の拡充(平成23年1月20日)1ページ(字数にして723文字)
米軍再編に係る訓練移転の拡充(平成23年10月4日)1ページ(字数にして880文字)

  さてそれでもネットサーフィンを続けることで、いくつか関連の記事を見つけることが出来た。実態はなんともややこしい話のようだ。 以下、関連の記事を4つ引用する。

1)日米地位協定に関する意見書 2014年(平成26年)2月20日 日本弁護士連合会

P.8
さらに,日本が管理する施設・区域を米軍が「一定の期間を限って」使用する形態があり(2-4-b区域 ,自衛隊 ) 施設を米軍が一時使用するのがその典型的なものである。 これには,●年間何日以内というように日数を限定して使用を認めるもの,●日本側と調整の上, そのつど期間を区切って使用を認めるもの,●米軍の専用する施設・区域への出入のつど使用を認めるもの,●その他, これらに準じて何らかの形で使用期間が限定されるもの,があるとされる(1971年(昭和46年)2月27日衆議院予算委員会で答弁された政府統一見解 。

P.9
また,米軍一時使用の施設・区域(2-4-b区域)は,2012年(平成24年)3月末現在49(71,816ha)となっているが(前掲『防衛ハンドブック』470ページ , この形態による施設・区域は特に1985年 )(昭和60年)以降急速に増大しており,実質的な米軍基地の拡大として注意を要する(後述 。

P.10
(2) 米軍一時使用施設・区域の増大が孕む問題 米軍が日本の管理下で一時使用する施設・区域(2-4-b区域)は,ほとんどが自衛隊基地である。 一時使用施設・区域は,米軍による一定期間の 訓練等のために使用されている。 一時使用する施設・区域は,1980年 (昭和55年)には施設数7,面積14,874haであったものが, 19 85年(昭和60年)には施設数22,面積51,040haに急増し, その後も増え続け,2012年3月末現在施設数49,面積71,816ha となっている(1997年版『防衛ハンドブック』347ページ,2013 年版『防衛ハンドブック』470ページ 。) 日米同盟関係は近時急速に深化・拡大し,同時に自衛隊と米軍の共同訓練 も強化・拡大され,日米の統合的運用が進められている。このような中で, 米軍の自衛隊基地使用は,米軍の使用可能な基地を拡大するとともに,米軍 と自衛隊の一体化を一層推進する役割を果たすことになる。しかも,一時使 用施設・区域では,基地の維持費は基本的に日本が負担することになり,米軍にとって安上がりでもある。 一時使用の仕組みを使って「全自衛隊基地の共同使用」の実現が目標とされているのではないかとの指摘もなされている(前泊博盛編著『本当は憲法 より大切な「日米地位協定入門」 ) 』創元社2013年165ページ 。



2)明治学院大学機関リポジトリ 2003-3 「日米地位協定の立憲的統制 : 基地の提供・返還の場面」 高作正博著 P.64より

即ち、 地位協定2条4項(b)に基づいて提供された厚木基地は、 1971年6月29日の閣議決定により、 「使用目的」 を 「滑走路等を海上自衛隊の管轄管理する施設とし、 合衆国軍隊に対しては地位協定2条4項(b)の規定の適用のある施設及び区域として一時使用を認める」 とされ、 また、 「備考」 として 「本件飛行場は米側航空機による米側専用区域への出入のため及びそれに関連したその他の運航上の必要をみたすために使用される」 とされていた。 政府の説明では、 厚木基地の滑走路等の使用は、 「小規模な米軍専用区域への出入」 のためのものであること、 また、 「米軍の専用する施設・区域への出入のつど使用を認めるもの」 であることが強調されている。 しかし、1973年10月に横須賀基地が空母ミッドウエーの母港とされると、 厚木基地には艦載機が大挙して飛来し、 現在ではそれは、 実質的には空母艦載機の拠点基地となってしまっている。(19)



3)【ねこまたぎ通信】機密文書「地位協定の考え方」その1 2004-10-10

琉球新報がスクープして掲載した外務省の機密文書、「地位協定の考え方」全文を5回にわたってお送りします。琉球新聞はこの機密文書を04年7月末から8月にかけて、9回にわたって掲載しています。 TUPの読者の皆さんに配布していいかどうかを琉球新報にリクエストしたところ、快諾を得ることができました。 外務省では「この文書の存在を知らない」といっているので、著作権は誰にもないことになりますから、読者の皆さんはこの問題を真剣に取り上げてくださる人に転送されても、法律に問われる心配はありません。-略-

四 IIー4-(b)共同使用

1 米軍が「一定の期間を限って」使用すべき施設・区域に関しては、合同委員会は、「当該施設・区域に関する協定」中に、「適用があるこの協定の規定」の範囲を明記しなければならない(第二条4項(b))。この第二条4項(b)の規定に基づく共同使用は、通常II-4-(b)使用と称される。行政協定にも同様の規定があった(第二条4頁(b)が、行政協定においては、II-4-(a)の場合と同様、「射撃場及び演習場のような」施設・区域のみがかかる共同使用の対象とされていた。II-4(b)の規定中「当該施設・区域に関する協定」の「協定」とは、第二条1項でいう施設・区域に関して合同委員会を通じて両政府が締結する協定を指し、「適用があるこの協定の規定」の「協定」とは、地位協定自体を指していることは明らかである。

2 II-4-(b)使用はII-4-(a)使用とは逆に、通常の日本側の施設(現実には自衛隊が管理・使用する施設が多いが、通常の民間施設の場合-例えば神戸市所有の神戸港湾ビル、運輸省の施設たる板付飛行場滑走路等の例がある。-も排除されない。)を一定の条件で米軍が使用するものであるが、右条件のうちII-4-(b)の規定中にある「一定の期間を限って」の意味が従来最も問題とされて来た。この点については、昭和四六年二月二七日、衆・予において政府の統一見解が表明されている。(注23) (注23)一定の期間の意味についての従来の審議については、昭和四五年二月二三日、衆・予、同三月十八日、衆・予二分科、同五月十三日、参・内、昭和四六年二月二十日、衆・予二分科、昭和四七年五月二十五日、衆・内等参照。なお、右の政府統一見解は、中曾根防衛庁長官の答弁の形で表明されたが、その全文は、次の通り。 「第二条4項(b)に該当しますのは、要するにわが方が管理権を持ちまして、わが方の責任において管理する、しかし一定期間を限って臨時に米軍に使用を認める、わが方が主であって、臨時に認められる米軍の方は従でありあるいは客である。こういう関係で使用を認めるという態様であります。そこで、いままで行ないましたケース等を全部検討いたしまして、大体第二条4項(b)の解釈は次のようなものであろう、こういうことでございます。地位協定第二条4項(b)でいう「一定の期間を限って使用すべき施設・区域」とは、米軍の恒常的な使用が認められる通常の施設・区域(二条1項(a))及び日本側が臨時にしようできる施設・区域(二条4項(a)とは異なり、日本側のものではあるが、米軍の使用が認められ、その使用する期間がなんらかの形で限定されているものをいうが、 かかる施設・区域としては、実情に即して考えるに、一応次のごときものがあげられる。
(1)年間何日以内というように日数を限定して使用を認めるもの。
(2)日本側と調整の上、そのつど期間を区切って使用を認めるもの。
(3)米軍の専用する施設・区域への出入のつど使用を認めるもの。
(4)その他、右に準じて何らかの形で使用期間が限定されるもの。
右のごとく、使用期間を限定する方法については、当該施設・区域の態様、使用のあり方、日本側の事情等々により必ずしも一定せず、個々の施設・区域ごとに、具体的に定めるしかないが、いずれにせよわがほうの施設を米軍に臨時に使用させるというII-4-(b)施設・区域の本質のワク内で合理的に定めていく考えであります。」

3 右の統一見解の各項につき考え方を述べれば、次のとおりである。
(1)「年間何日以内というように日数を限定して使用を認めるもの。」
この例としては、神奈川県所在の長坂小銃射撃場(自衛隊施設)の如く米軍が年間一六〇日以内の使用を認められているものが挙げられる。この場合、年間の使用の仕方が連続して一六〇日間であっても、又は断続的に使用されその使用日数の合計が年間を通じて一六〇日であっても、地位協定上は問題ない(自衛隊側の使用との調整という実際上の問題があるのみ)。この点については、「使用の態様によっても違うが一応時間的にいえば一年のうち半数以上米軍が使用するというのでは主客転倒となる(この場合には、むしろ通常の施設・区域にして日本側がII-4-(a)使用するのが筋である。)。」との趣旨の中曾根大臣答弁が行われている(昭和四六年二月二七日、衆・予議事録二六頁)ので注意を要する(この点次の(2)で再述)。
(2)「日本側と調整の上、その(使用の)つど期間を区切って使用を認めるもの」 この例としては、富士演習場(通称東富士演習場、自衛隊施設)があるが、これは、米軍の衣装に際して、自衛隊の使用と調整されるので、その調整を通じて使用機関が限定されるという意味である。この場合、調整を通じて限定された使用期間が結果として半年を越える場合は、日数に関する限り右の中曾根長官答弁に抵触するものと考えられる。尤も、右の統一見解及び答弁において述べられているように、施設・区域の態様、使用の態様によっては、必ずしも時間的要素のみによっては、問題を論じえないことは明らかである。現実に、東富士の場合、日数のみでみる限り米軍のII-4-(b)使用日数は半年をはるかに越えるが、他方、米軍の使用は面積的には東富士の極一部(全体の一割程度)に限って行なわれており、東富士施設の日米双方の全体の使用態様から見る限り、当該施設の主体は日本側であるという意味では主客転倒という議論はあたらないような実態である。
(3)「米軍の専用する施設・区域への出入りのつど使用を認めるもの。」本項については、右の統一見解表明の際、楢崎議員(社)より「専用区域に出入りするために使うというのは、それを利用してその出入権を利用してそのほかの使用をするということは厳に禁ぜられると考えてよいか」との趣旨の質問があり、これに対し、中曾根長官より「施設に行くために滑走路を使用する、そういう意味でその主たる目的に従ってその限定された使用が認められなければならない」 との答弁が行なわれていることに留意する必要がある。本項の如きII-4-(b)使用の例としては、飛行場についてみれば、硫黄島飛行場、南鳥島飛行場、板付飛行場及び厚木飛行場(運輸省施設たる板付を除き自衛隊施設)の滑走路等があるが、前二者の場合は、飛行場近接の米軍施設・区域たる通信所へのアクセスが「主たる目的」であり、本来通信所は滑走路の存在抜きで機能しうる施設である。 板付飛行場についても「主たる目的」は、板付周辺の米軍への補給基地たる専用地域(施設・区域)への(物資輸送のための)アクセスということで説明されるものである。厚木飛行場についてもグアムに駐留する哨戒機が厚木飛行場にある修理施設に出入すること及び輸送機の隣接基地への物資輸送・連絡のための出入のためとして説明されることになっている。(「主たる目的」は、修理施設、隣接基地への補給・連絡である。)他方、沖縄返還後現在のところ暫定的に那覇飛行場を使用しているP-3対潜哨戒部隊の場合(この点の問題については、次の(4)のところで触れる。)には、部隊の本拠は、那覇飛行場そのものであり、滑走路の存在なくしてはP-3の存在そのものが考えられない(「主たる目的」は、哨戒のため滑走路を使用することである。)という関係にあり、そもそもアクセスとしての滑走路の使用ということにはなじまない。(このような場合にも、例えば施設・区域たる駐機場へのアクセスのためという理由で滑走路のII-4-(b)使用を認めれば、すべての滑走路は、II-4-(b)使用の対象となりうることとなってしまう。) なお、本項によるII-4-(b)使用には、滑走路のほかにも、前述の神戸港湾ビル(船舶の出入のつど)等がある。
(4)「その他、右に準じてて何らかの形で使用期間が限定されるもの。」この例としては、現在のところ那覇飛行場の滑走路等がある。(注24) (注24)那覇空港は、沖縄返還交渉を通じ、復帰の際には完全に民間空港となり、P-3等も他へ移転している筈であったが、諸般の事情からこれが実現せず、他方、同飛行場を施設・区域とすることは、わが国内政治情勢上も不可能であったので、とりあえずこれを運輸省所管の空港とし、滑走路、誘導路等をII-4-(b)使用とし、その他に若干の専用区域を設け、これを通常の施設・区域として提供した。 那覇飛行場の滑走路については、既に述べたとおり、(3)による期間限定によることができなかったので、(4)によることとし、具体的には「P-3移転のための代替施設完成までの間」とした。それでは、代替施設完成までの間は滑走路は常に施設・区域かというとそうではなく、具体的な使用態様は、当然のことながら民間機(自衛機を含む。)による使用と調整して使用される訳であり、強いていえば、特定の米軍機が現に滑走している時のみが滑走路は施設・区域になるといえよう。この意味で、この場合のII-4-(b)使用は現実には、(2)に準じたものと考えられる。

4 第二条4項(b)は、II-4-(b)使用につき、施設・区域に関する政府間協定の中に地位協定の規定のうち当該II-4-(b)使用に適用のあるものを明記すべき旨規定しているが、現在までのところ、右政府間協定では「地位協定の必要な(又は関係ある)全条項が適用される。」という如き規定しかなく、適用されるべき個々の地位協定の条文(逆に、適用を排除すべき条文)を具体的に列記するといった規定振りはされていない。 右については、従来国会で再三問題にされ(昭和四三年十月十七日、参・内議事録十六頁、昭和四五年九月二九日、参・内議事録四二頁等)ており、その後、具体的な規定振りにつき検討したことはあるが、今日まで結論は出ていない。しかしながら、実際上の問題として、II-4-(b)使用についての協定(合同委員会の合意及びこれに基づく現地取極を含む。)において米側の使用の日的、態様等が定められており、その限りで適用条項が自ずと制限されること等のことから、現在の如き定め方をもってしても、いわゆる管理権その他の地位協定上の権利義務関係が不明確なまま残されて実際上問題を生じるようなことはないと考えられる。

5 II-4-(b)使用施設は、米軍による現実の使用が行なわれている際は、協定上の施設・区域と観念されるが、この場合のいわゆる管理権の所在については、II-4-(b)施設の態様、使用の態様により又当該II-4-(b)使用に関する協定の定め方により定まるものと考えられ、一概に米側に管理権があるとはいえない。例えば、出入のつど滑走路が使用される場合、米軍機が滑走している際の滑走路は、(強いていえば)施設・区域であるが、その際当該滑走路に米軍が管理権を有しているとは考えられない。(注25)
(注25)同様に、右の如き施設・区域に刑事特別法第二条(施設・区域を侵す罪)が適用されるかとの点につき、政府は、右の如き場合に同法の右規定が適用されるような事態はそもそも考えられないが、万一米軍機が滑走路上にある時に事件が起る場合には理論的には適用が問題になるとの趣旨の答弁を行なっている(昭和四七年五月十日、衆・外議事録十一頁)が、右の如き滑走路は、通常は施設・区域としての立入禁止標示もないから刑事特別法第二条は、理論的にも適用はないものと解される。尤も、滑走中の米軍機に危害を加える如き行為を行なうものに対しては、別途同法第五条(軍用物を損壊する等の罪)が適用されることとなる。 以上については、一般論としてII-4-(b)使用中の管理権の所在はそのつど決めるとの政府答弁もある(昭和四五年三月十八日、衆・予二分科議事録九頁)が、これは、右で述べたことと同趣旨であると解される。

6 最後に、いわゆる有事再使用的なII-4-(b)使用(即ち、II-4-(b)使用権は設定されても、有事でない限り現実には使用されず、従って、現実には有事の際に期間を限って使用するという予約の如きものになる。)は、現行地位協定下で可能かという問題がある。即ち、現行安保条約下で有事駐留に移行した場合(現行安保条約は、かかる事態を予想してはいないにしても、他方、条約論的にみて排除されているとも考えられない)、現行地位協定にも手を触れずに、II-4-(b)によって米軍の有事の際の使用権を確保しうるかという問題である。この場合、米軍は、とりあえずII-4-(b)使用を行ない、その使用期間の間にII-4-(b)施設を通常の施設・区域に切り換えるという手続がとられることとなる。しかし、右の場合、米軍による施設の使用を常に可能にしておくためには、米軍撤退後の施設は、実際上自衛隊によって管理されなければならないことを先ず留意すべきである。このためには、米軍撤退後の施設について、地主との関係では米軍の使用に供するためという内容の契約を自衛隊の使用に供するという内容の契約に切り換え(II-4-(b)使用の場合、通常は、契約中に米軍の用にも供しうるとの趣旨の規定も含まれる。)ることが必要となるが、現在の政治情勢ではかかる契約更改には多大の困難を伴うことが予想される。 更に、II-4-(b)の規定の解釈としても、期間限定の統一見解の(2)項(日本側との調整による。)及び(3)項(出入のつど)は、適用しえないと考えられ、他方、(1)項については、「年間何日以内」の意味は、この場合、必要な場合には年間何日以内となるが、かかる考え方が、協定上の解釈としてどこまで認められるか相当慎重に検討する要があると考えられる。(注26) (注26)以上の点に関しては、過去において、「(II-4-(b)弾力的運用)有事駐留の構想とは基本的に異なる。」(佐藤総理、昭和四五年二月十七日、衆・本議事録五六頁)「(II-4-(b)の弾力的運用と有事使用との関係は)なおよく検討したい。」(愛知外務大臣、同三月六日、衆・外議事録九頁)「(弾力的運用による有事使用的なものを)地位協定の枠内でできるだけ実現させて行く考えである。」(中曾根長官、同九月二十九日参・内議事録二九-三十頁)等の趣旨の政府答弁が行なわれている。

(筆者注)一部、行の欠損があり、 こちらも参照した。

 最後に引用するのは、1999年3月のものだ。筆者は浅学にして2-4-B条項について問題意識を持ったのは、つい最近のことだったが、ずっと以前から問題視されていたようだ。


4)解説:日米地位協定と「施設の使用」 (前田哲男)ピースデポより

(2)日米地位協定第2条第4項B

 一つは、日米地位協定第2条による「共同使用」の実現である。3月22日の朝日新聞記事も、これに基づく防衛庁の検討内容に関するものであった。
 日米地位協定は、安保条約第6条(基地提供条項)に基づき細則を定めた協定であるが、その第2条第4項Bには、米軍による基地の一時使用ないし再使用権が規定されている。条文は次の通りだ。

 「合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、(日米)合同委員会は、当該施設及び区域に関する規定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない」 

つまり日米合同委員会で合意すれば、そして「規定の範囲を明記」すれば、日本全国どの場所でも事実上の米軍基地になしうることが読みとれる。日米合同委員会の議事内容は原則非公開なので、どこが、どんな条件で一時使用基地になったのか国民は知ることはできない。まして、すでに2-4-B条項によってリストアップされている基地については、合同委了解によって、いつでも米軍基地として再使用できると考えておかなければならない。そのような潜在米軍基地が以下に掲げるほども存在するのである(防衛ハンドブック98年版による)。 

〈資料・日米地位協定2-4-Bが適用される施設〉
〈北海道〉16か所
 ◆東千歳駐屯地 ◆鹿追然別中演習場
 ◆千歳演習場 ◆帯広駐屯地
 ◆千歳飛行場 ◆旭川近文台演習場
 ◆別海矢臼別大演習場 ◆丘珠駐屯地
 ◆釧路演習場 ◆名寄駐屯地
 ◆鹿追駐屯地 ◆浦川演習場
 ◆上富良野中演習場 ◆美幌訓練場
 ◆札幌駐屯地 ◆倶知安高嶺演習場

 〈本州〉11か所
 ◆高田関山演習場 ◆百里飛行場
 ◆相馬原演習場 ◆長坂小銃射撃場
 ◆富士演習場 ◆滝ケ原駐屯地
 ◆小松飛行場 ◆今津饗庭野中演習場
 ◆岐阜飛行場 ◆第1術科学校訓練施設(建物)
 ◆原村演習場

〈九州・沖縄〉7か所
 ◆新田原飛行場 ◆崎辺小銃射撃場
 ◆日出生台十文字原演習場
 ◆大村飛行場 ◆安波訓練場
 ◆浮原島訓練場

 これらはおもに自衛隊が演習場や駐屯地として使用している場所だが、なかには小松飛行場のように、民間空港(自衛隊との共用)もある。

 以上で「一定の期間を限って使用」に関する追記の注意書きを終わります。




参考: 日米地位協定

以下、⇒外務省HPから。

日米地位協定
第二条

1(a) 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。 個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。 「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。

(b) 合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、 両政府が(a)の規定に従つて合意した施設及び区域とみなす。

2 日本国政府及び合衆国政府は、いずれか一方の要請があるときは、前記の取極を再検討しなければならず、 また、前記の施設及び区域を日本国に返還すべきこと又は新たに施設及び区域を提供することを合意することができる。

3 合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、 いつでも、日本国に返還しなければならない。 合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。

4(a) 合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、 日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる。 ただし、この使用が、合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとつて有害でないことが 合同委員会を通じて両政府間に合意された場合に限る。

(b) 合衆国軍隊が一定の期間を限つて使用すべき施設及び区域に関しては 合同委員会は、 当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。



目次; 日本独立の選択

  • 表紙          1
  • 日本の現状 2345
    • 日本の米国化 6 7 8
    • 日本の国益 9
    • 戦争協力 10
    • 日本の現状を変更する 1112
  • 在日米軍基地の返還方法 1314
  • 国防
  • 日本の未来を予測する
    • 「選択をしない」という選択をした場合 51
    • 選択をした場合 52
    •                53
  • 文中選択肢一覧 5455
  • あとがき          56